中毒/その他
その他の中毒物質
チョコレート
チョコレートには、メチルキサンチン類といわれる物質(テオブロミンやカフェイン)が含まれていて、これが中毒を引き起こします。重篤度や症状の発現は、摂取したチョコレートの量や種類で変わります。ホワイトチョコレートなら、ほとんどテオブロミンは含まれていません。チロルチョコなら、1個に約14mgのテオブロミンが含まれているので、1kgの犬が10個を一度に食べてしまうと危ない、と考えられます。
メチルキサンチンの中毒量
用量 症状 20~40mg/kg 軽度~中等度の症状 40~50mg/kg 不整脈、時に致死性 >60mg/kg 発作
症状はチョコレート摂取6~12時間後に出現することが多くて、初期は嘔吐、下痢などがみられます。進行すると、興奮、失禁、てんかん発作、発熱、痙攣、振戦、昏睡が起こります。
筋形質カルシウムの再取り込み阻害と細胞内カルシウムの流入増加による細胞質内カルシウム濃度の増加によって心筋と骨格筋の収縮が高まります。脂肪原因の多くは、不整脈、呼吸不全、高熱によるDICです。
治療
- 中枢神経症状(発作)にはジアゼパム(0.5~2mg/kg)を静脈内投与。
- 不整脈
- 必要に応じて静脈内輸液を行います。
- 上室性頻拍性不整脈にはβブロッカーを投与します。プロプラノロールを0.04~0.06mg/kgで2~3分以上かけて緩徐に静注。
- 早い持続性の心室性不整脈にはリドカインを1~4mg/kgで静注。
- 高熱には、輸液を。
- 催吐処置は、無症状もしくは症状が安定した後の動物のみに行います。催吐は、摂取後8~12時間以内であれば有効です。胃瘻チューブを挿入して、胃内洗浄も必要に応じて行います。
- 活性炭の投与を中毒がなくなるまで8時間毎に行います。テオブロミンの半減期は約17.5時間なので、症状がなくても注意が必要です。
- カフェインが尿から再吸収されるので、尿カテーテルを設置することもあります。
エリスロマイシン、シメチジン、ステロイドによって、メチルキサンチンの代謝が遅くなるので、投与は禁忌です。
キシリトール
詳しいことはよくわかりませんが、歯にいいからと与えていたら、中毒症状が頻発して、調べてみると、インスリンの分泌を促進して低血糖になるとか、長期間・大量摂取で、肝臓へのグリコーゲン蓄積が起こったりします。死亡例も報告されています。単回投与の毒性は低いという報告もありますが、キシリトールガムには意外と多くのキシリトールが含まれているので、注意しましょう。
中毒量は、100~200mg/kgと言われています。致死量は、250mg/kg~500mg/kgではないかと思われます。
イベルメクチン
高用量(フィラリア予防量の10~15倍)のイベルメクチンに暴露されることによって生じる中毒です。非常に若い動物では、血液脳関門が未発達なために危険性が高くなります。
また、コリー種では、常染色体劣性形質(MDR-1遺伝子の変異)が関与していて、血液脳関門における多くの薬物通過に関連するp-糖蛋白の欠損があって、低用量でも中毒を惹起します。イベルメクチンは、マクロサイクリックラクトーンですが、マクロサイクリックラクトーンは、抑制性神経伝達物質γアミノ酪酸(GABA)の放出を促進します。寄生虫や昆虫では、GABAが媒介するニューロンは、末梢神経系全般に存在していて、GABAの放出促進は麻痺を引き起こします。哺乳動物では、GABAが媒介するニューロンは中枢神経系に限られているんですが、血液脳関門を通過してしまうと抑制作用を及ぼして、中枢神経系の機能低下を示します。
イベルメクチン中毒の症状は、中枢症状が主で、沈鬱、意識朦朧、運動失調、振戦、嘔吐、食欲不振、横臥、盲目、昏睡、発作、死亡することもあります。長期の昏睡状態になることもあります。
治療
- 発作には、ジアゼパム(0.25~2mg/kg)を静注します。
- 昏睡動物の管理
- 気道の確保。酸素吸入、体温調節を行う。
- 徐脈にはアトロピン(0.01~0.02mg/kg)を静注します。
- 褥創性潰瘍を防ぐために、体位の変換を行う必要があります。
- 尿道カテーテルの設置をしておきましょう。
- 催吐処置、胃洗浄を行って、活性炭を投与します。
特異的な解毒薬はありませんので、対症療法を行って回復に努めましょう。