役に立つ動物の病気の情報 | 獣医・獣医学・獣医内科学など

中毒/植物・飼料

Top / 中毒 / 植物・飼料

植物・飼料による中毒

個々の毒性については専門書に任せます。飼い主さんもある程度は知っておいた方がいいと思いますので、有害なもので身近にあるものをインターネットで調べて注意しておくといいと思います。例えば、ユリ科の植物の球根部分とか、ネギ科(タマネギやニンニク)、ナス科の食べ物など。ナス科には、ジャガイモやトマト、ナスがありますが、熟したものは無害ですけど、芽や緑色の実、葉などは有毒です。タバコの葉も、もちろん危険です。

植物

植物の中には、有毒な成分をもつものがたくさんあります。有毒な部分は、花であったり、葉、根、種子など様々で、犬や猫が口に入れる可能性の高さによって危険度が違ってきます。薬草であっても食べ過ぎると中毒を起こし得ます。同じ植物でも、部位が違えば毒性が異なります。

有毒植物による中毒の治療は、催吐処置、胃洗浄、活性炭などの吸着剤の投与、下剤の投与の他、必要に応じた対症療法(輸液点滴など)を行います。粘膜への刺激が強い物質による中毒では、吐く際に、食道や口腔粘膜に刺激があって痛めることもありますので、注意が必要です。

 タマネギ中毒

タマネギ、ニンニク、ニラなどを食べることで起こる中毒です。症状は、元気消退、脱力、流涎、嘔吐、下痢などです。ネギ類に含まれる成分(スルホキシド)が加水分解されていって、ジプロピルスルフィドになって、これが赤血球の膜を酸化して、その結果、溶血、ハインツ小体、メトヘモグロビン血症、貧血を引き起こします。貧血によって粘膜が蒼白になる症状、ヘモグロビン尿によるコーヒー色の尿がみられることもあります。

どの程度のタマネギを食べると症状が出るのか、危ないのか、ということですが、目安としては、10g/kgのタマネギを食べると軽い貧血になります。15g/kgだと重い貧血になります。別の指標として、体重の0.5%量のタマネギを摂取すると、中毒症状が出る可能性が高いとも思われます。中程度の大きさのタマネギが約200~250gぐらいなんで、体重10kgの犬がタマネギ1/4を食べてしまうと危ない、ということですね。

毒キノコ

自生しているキノコを食べてしまったり、食用と誤って与えてしまうことで中毒を起こすことがあります。

  •  クサウラペニタケ・ツキヨタケ・カキシメジ
    •  食後30~3時間で嘔吐や下痢が起こります。治療は、催吐処置、胃洗浄、活性炭の投与、輸液です。
  •  ドクツルタケ・シロタマゴテングタケ・フクロツルタケ・コレラタケ
    •  食後6~10時間経ってから、激しい腹痛、嘔吐、下痢を引き起こします。1~3日後に、肝障害や腎障害が起こって死亡することもあります。治療は、催吐処置、胃洗浄、活性炭の投与、輸液、利尿剤の投与、肝障害に対する処置を行います。
  •  テングタケ・ベニテングタケ
    •  食後30~2時間程度で、運動失調、痙攣、錯乱、昏睡などが起こります。催吐処置、胃洗浄、活性炭の投与、下剤の投与を行います。

マイコトキシン

真菌(カビ)が産生する有害物質の総称がマイコトキシンです。マイコトキシン中毒に対する特異的な治療法はなくて、対症療法が行えるのみです。感染すると、免疫力が低下するので、二次感染にも注意が必要です。

  •  アフラトキシン
    •  トウモロコシや大豆などに発生するアスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・パラジカスによって産生されます。急性に、食欲不振、沈鬱、肝障害(黄疸、腹水、出血傾向)などがみられます。死亡することもあります。発がん性や催奇形性もあります。
  •  トリコテセン系カビ毒(赤カビ)
    •  フサリウム属の真菌によって産生されます。口腔や皮膚の壊死、嘔吐、腹痛、下痢、造血機能障害などの症状がみられます。猫に感受性の強いことが特徴です。
  •  オクラトキシン
    •  トウモロコシ、大麦、ライ麦、小麦などに発生するアスペルギルス・オクラセウス、ペニシリウム・ビリディカーガムによって産生される毒素です。肝障害や腎障害を引き起こします。

フグ毒

フグの毒は、テトロドトキシンです。人でも中毒になることが知られていますね。動物でも同じです。フグには毒のあるものとないものがあります。防波堤で釣り上げられるクサフグには、卵巣、肝臓、腸に猛毒があります。捨てられているものなどを犬や猫が口に入れないように注意が必要です。

摂取したら、嘔吐、腹痛、麻痺、痙攣、呼吸困難などの症状が現れて死亡することがあります。治療には、催吐処置、胃洗浄を行って、対症療法(輸液、人工呼吸など)を行うしか方法はありません。

最近は絶対数が減ったのですが、ニホンイモリ(アカハライモリ)というイモリがいます。これも皮膚にテトロドトキシンを持っています。もし、ニホンイモリが生息している地域があれば、注意しましょう。