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免疫介在性の疾患

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免疫介在性の疾患

発生機序

免疫介在性の疾患は、免疫防御反応が不適切に活性化したときに起こって、その結果として、臓器の傷害が生じます。病的な免疫反応が、感染性の病原体に反応して生じることがあって、その結果、病原体の感染による症状(マイコプラズマ感染による溶血性貧血など)に関与したり、本来は無害な外来性物質による刺激が発生したり(ハウスダストによるアレルギー反応など)、自己抗原に対する反応が起きたり(自己免疫疾患など)します。

自己免疫というのは、本来起こってはいけないはずの、体の自己組織の成分(自己抗原)に対する特異的な液性免疫や細胞性免疫反応が起こることです。基礎疾患が同定されず、自己免疫反応が、免疫系の機能異常やバランス異常によって起こっている場合、原発性自己免疫疾患、と言ってます。二次性自己免疫疾患というのは、自己免疫反応を起こすような基礎疾患が同定できる場合に用いる言葉です。二次性自己免疫疾患の原因には、感染、薬剤や毒物への暴露、腫瘍やワクチン接種などが挙げられます。
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診断アプローチ

免疫介在性の疾患が疑われる犬や猫に対する診断アプローチは、症状や対象臓器によって変わってきます。先ずは、既往歴、環境要因や薬剤への暴露、感染因子への暴露、ワクチン接種歴に関して、しっかりと聞き取りを行います。次に、身体検査を行って、問題の程度を明らかにして、血液検査や尿検査の結果を見ながら、臨床症状を起こす一般的な他の原因を除外します。多くの免疫介在性の疾患では、発熱や白血球の増加が認められるので、感染を除外することが重要です。

血液検査、尿検査に加えて、細菌培養やウイルス検査、胸部・腹部のX線検査や超音波検査も重要です。マイコプラズマやL型菌、マダニ介在性のリケッチアや原虫を除外することも必要です。多くの感染症を除外するにあたって、どの特異的な検査を行うかは、動物種(犬なのか、猫なのか)、居住地域などを考慮して考えていかなくてはなりません。
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治療

何らかの疾患(基礎疾患)が原因で免疫介在性の疾患が見られる場合、基礎疾患の治療も合わせて行う必要があります。免疫介在性の疾患の治療には免疫抑制療法を行いますが、基礎疾患の治療を効果的に行うことによって、免疫抑制療法の期間を短くできます。

免疫抑制剤での治療では、副作用が出てしまいます。しかしながら、短期的には副作用よりも状態を改善させることが必要です。もちろん、副作用を最小限に抑えるために、基礎疾患の治療を同時に行うなどして、効果的な治療を行い、免疫介在性疾患をコントロールしていきます。

長期的には投薬量を徐々に減らして副作用を抑えていきます。減らしていく際には、常に検査を行って疾患の状態をモニタリングしておく必要があります。薬の効果が見られなかったり、減薬ができない場合は、他の治療方法を検討しましょう。

免疫抑制剤による合併症にも注意を払いましょう。合併症の治療を同時に行うことで、長期的な治療に対する効果が違ってきます。副作用も最小限に抑えられます。このような免疫抑制療法の効果を高めるための治療を、支持療法といいますが、皮膚のケア、栄養学的なサポート、感染モニター、消化管潰瘍の予防など積極的に行ってあげましょう。
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免疫介在性の疾患の色々

 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

最もよく見られる免疫介在性の疾患は、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)です。IMHAは、免疫が介在した赤血球の破壊亢進により、貧血を起こす臨床症候群です。犬でより一般的な溶血性貧血の原因です。猫では少ないです。原発性のIMHA(自己免疫性溶血性貧血)では、抗体は赤血球の膜の抗原に対して産生されています。全身性エリテマトーデスの一徴候としても認められます。二次性のIMHAは、基礎疾患が考えられるわけですが、感染や腫瘍性疾患などがあります。薬剤やヘビ毒、ワクチンの暴露の後にも生じることがあります。
犬での自己免疫性溶血性貧血は、二次性のものより、原発性の方が多いのが特徴です。猫では二次性のIMHAの方が多く発生します。
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 その他の免疫介在性疾患

  1.  免疫介在性血小板減少症
  2.  免疫介在性好中球減少症
  3.  特発性再生不良性貧血
  4.  多発性関節炎
  5.  全身性エリテマトーデス
  6.  糸球体腎炎
  7.  後天性重症筋無力症
  8.  免疫介在性筋炎
    1.  咀嚼筋炎
    2.  多発性筋炎
    3.  皮膚筋炎

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