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内分泌・代謝系の疾患

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内分泌系の疾患

視床下部・下垂体の疾患

視床下部・下垂体は、種々のホルモンの分泌をコントロールする部位で、身体の恒常性を維持する働きを持っています。下垂体の前葉からは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)、性腺刺激ホルモン(LH、FSH)が、下垂体の後葉からは抗利尿ホルモン(ADH)が分泌されます。視床下部から分泌されるホルモンによって下垂体前葉ホルモンの分泌がコントロールされています。ACTHは副腎を刺激してコルチゾールを、TSHは甲状腺を刺激して甲状腺ホルモン(T3、T4)を、GHは肝臓でIGF-I産生を、LHは雄では精巣を刺激してテストステロンを、LH、FSHは雌では卵巣を刺激してエストロジェンを末梢ホルモンとして産生します。

上皮小体の疾患

上皮小体の機能亢進症と低下症があります。
上皮小体機能亢進症は、上皮小体ホルモン(PTH)分泌が持続的に亢進する疾患です。上皮小体の主細胞は、血液中や細胞外液中のカルシウム濃度を、分刻みで調節するペプチドホルモンであるPTHを合成して、分泌しています。PTH分泌の主な調節因子は、血液中のカルシウムイオン濃度です。カルシウム濃度が低下すると、PTH分泌が増加して、Ca濃度が上昇するとPTH分泌は減少します。PTHは腎臓でのカルシウムの再吸収を促進して、リンの再吸収を阻害して、腎臓での活性型ビタミンDの合成を促進して、骨吸収を促進します。

上皮小体機能亢進症は、血清カルシウム濃度の低下に対する正常な生理反応でもあり、原発性上皮小体機能亢進症のような、上皮小体主細胞でのPTHの過剰合成・過剰分泌による病態の場合もあります。血清中のカルシウム濃度とは関係なく、PTHの分泌が持続するのが、原発性上皮小体機能亢進症です。
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甲状腺の疾患

甲状腺機能低下症は、犬で頻発する疾患です。猫では、医原性の機能低下症が多く、原発性甲状腺機能低下症は多くありません。甲状腺機能低下症は、構造的な異常、もしくは機能的な異常で甲状腺ホルモン産生が不足する疾患です。視床下部・下垂体からの甲状腺ホルモン放出経路が障害されて起こりますが、犬では、甲状腺そのものの異常、甲状腺の破壊で発生する原発性甲状腺機能低下症が最も多くみられます。

甲状腺機能低下症

発性甲状腺機能低下症の病理所見では、リンパ球性甲状腺炎と甲状腺萎縮です。リンパ球性甲状腺炎は、甲状腺へのリンパ球、形質細胞、マクロファージのび慢性浸潤を特徴とする免疫介在性の疾患です。原因はわかりません。遺伝的な素因もあると考えられています。

甲状腺の特発的な萎縮は、実質の喪失が特徴です。甲状腺濾胞に、炎症細胞の浸潤は認められません。これも原因不明です。

膵臓内分泌疾患

高血糖
基準値は、血糖値が130mg/dLなら、高血糖です。症状は、腎尿細管におけるグルコース再吸収の閾値を越えるまで現れません。犬では、血糖値が180~220mg/dL以上になると尿糖陽性になって、猫では200~280mg/dLにわたります。血糖値がこれらの閾値を越えると症状が現れてきて、多飲・多尿を引き起こします。多くは糖尿病が原因です。尿糖を伴わない高血糖は、猫のストレス性疾患でみられることがあります。カテコールアミン分泌や乳酸によるものと考えられます。軽度の高血糖は無症状であり、もしその状態で多飲・多尿なら、糖尿病以外の疾患を考えましょう。ストレス下、興奮状態、糖分を多く含む食物を食べた後、薬物投与でも高血糖が起こる場合があります。空腹時の高血糖が認められて、持続するようなら、インスリン抵抗性の疾患を考慮する必要があります。

低血糖
血糖値が60mg/dL以下なら、低血糖です。正常細胞・腫瘍細胞によるグルコースの過剰利用、肝臓の糖新生やグリコーゲン分解の異常、血糖上昇ホルモンの不足、食事中のグルコースや肝臓での糖新生に必要な栄養分の摂取不足などが原因です。採血後に、血液を長時間放置すると、約7mg/dL/時の割合でグルコース濃度が低下します。なので、先ずは血糖値から測定しましょう。

症状は、血糖値が45mg/dL以下になると発現します。特発的に起こることもありますし、慢性的に起こることもあります。神経障害や交感神経刺激の結果として起こります。神経障害では、発作、虚脱、運動失調、昏睡などが、カテコールアミン分泌増加による症状では、落ち着きがない、神経過敏、筋攣縮などがみられます。症状は、持続的であったり、間欠的であったりします。低血糖によくある発作は、間欠的なことが多く、だいたいは1~5分以内に回復します。インスリンの効果を遮断して、肝臓の糖新生を刺激することで、血糖値上昇促進機序(グルカゴンとカテコールアミンの分泌)が活性化するからです。

低血糖の原因には、子犬や子猫では特発性、飢餓、肝不全(門脈シャント)、敗血症が多く、成犬・成猫では肝不全、副腎皮質機能低下症、敗血症によるもの、老犬・老猫では肝不全、β細胞の腫瘍、膵外腫瘍、副腎皮質機能低下症、敗血症が多くみられます。特に、子犬や子猫の特発的な低血糖には気をつけましょう。死亡することもよくあります。

急性低血糖発作の治療

自宅での発作
の場合

動物の歯肉に砂糖水を擦り込む
 ⇒ 落ち着いたら少量の食べ物を与える
 ⇒ 病院へ!
病院での発作
の場合

1~5mLの50%ブドウ糖液を10分以上かけて静脈内投与
 ⇒ 落ち着いたら少量の食べ物を与える
 ⇒ 長期療法へ
難治性の発作
の場合

2.5~5%ブドウ糖液を維持量の1.5~2倍で点滴
 ⇒ 点滴中に0.5~1.0mg/kgのデキサメタゾンを添加。
    6時間以上かけて点滴静注

治療は原因を解決することが重要ですが、原因疾患が特定できない、改善できないで低血糖が持続するなら、血糖値を上昇させて症状を最小限に留めるよう長期間の対症療法が必要となります。転移性のβ細胞腫瘍や悪性膵外腫瘍で必要となります。

急性かつ重度な低血糖には、グルコースを投与することです。自宅では、砂糖水を口腔内の粘膜に擦りこみましょう。1~2分で反応してきます。飼い主には、口の奥に糖液を流し込んだり、指を入れないように言いましょう。落ち着いてから、少し食事をさせて、そのまま動物病院へ連れて行きましょう。低血糖による虚脱、発作、昏睡が起こったら、50%グルコースをゆっくりと静脈内投与します。β細胞腫瘍がある場合、急速なグルコースの投与は、腫瘍からの過剰なインスリン分泌反応を誘発して低血糖を悪化させます。重篤な中枢神経症状は、グルコースの投与に反応しません。重篤な低血糖で中枢の低酸素が長時間持続すると、不可逆的な中枢神経障害が起こります。持続的に2.5~5%ブドウ糖液を持続点滴して、継続的にグルコースを供給してあげましょう。発作には、ジアゼパムなどの抗てんかん薬を投与します。脳浮腫を治療するために、ステロイド(デキサメタゾン)やマンニトールが必要になります。

副腎の疾患

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
副腎皮質機能亢進症は、下垂体性、副腎腫瘍、ステロイドの過剰投与に起因する医原性、の3つに分類されます。犬で頻繁にみられる疾患です。猫でも稀に認められますが、猫の場合、糖尿病との強い関連性、進行性の体重減少による悪液質、皮膚や表皮の萎縮による非常に弱く、薄く、破裂しやすく、潰瘍のある皮膚が特徴的です。猫での効果的な内科療法はありません。

副腎皮質機能低下症(アジソン病)
副腎皮質機能低下症は、ミネラルコルチコイドやグルココルチコイドの欠乏で起こります。その両方の分泌不全を呈する原発性の副腎皮質機能低下症が最もよく認められます。原因は明確にはわかっていませんが、病理所見でリンパ球や形質細胞の浸潤と線維化がみられることから、免疫介在性に副腎皮質の破壊が起こっているものと考えられます。
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内分泌疾患に関わる副腎の腫瘍・腫瘤
褐色脂肪腫は、副腎髄質のクロム親和性細胞から発生するカテコールアミン産生腫瘍です。犬や猫で、褐色細胞腫が診断されることはあまりなく、珍しい疾患です。孤立性で、成長が緩徐な腫瘍で、直径0.5cm以下の結節である場合もあり、直径10cm以上の腫瘤になることもあります。
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代謝系の疾患

多食・肥満・高脂血症

普通、多食は体重増加を伴いますし、体重減少は食欲不振や食欲喪失を伴います。しかしながら、体重減少を伴う多食を主訴に来院することがあって、原因は、不十分なカロリー摂取が主です。

単純な理由として、食事量が不十分であったり、栄養のバランスが悪い、食事の品質が悪い、ということで、1日のカロリー要求量を満たしていないこともあります。内分泌障害や消化器疾患も、基礎代謝量の増加(甲状腺機能亢進症)や消化吸収不良(消化器疾患)、栄養素の不適切な消費(糖尿病)をもらたして、結果、犬や猫の体重減少を伴う多食の原因になります。
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電解質の代謝異常

電解質異常は、血液中のミネラル分などの電解質のバランスが崩れた状態です。電解質バランスが保たれなくなると、さまざま体の不調が表れます。内臓機能の働きが悪くなったり、ひどくなると命の危険にも曝されます。特に高齢の犬や猫、抵抗力が低くなっている症例などは注意しましょう。

原因としては、下痢や脱水症状などで水分のバランスが崩れること、また薬の副作用などが原因で起こることがあります。 電解質異常は、症状が分かりづらい場合も多々あるので、少しでも電解質異常が疑われる要素があれば、早めに血液検査をすることが重要です。

治療は、不足している電解質の種類を検査で明らかにして、足りない電解質を点滴で補う処置を施します。補うことだけではなく、必要に応じて過剰な電解質を取り除く処置なども行います。