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内分泌・代謝系の疾患/糖尿病性ケトアシドーシス

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糖尿病性ケトアシドーシス

糖尿病性ケトアシドーシスの病態は複雑です。併発疾患にも影響されます。基本的に、インスリンが不足しています。毎日、インスリンを投与して血中インスリン濃度が状しているにも関わらず、糖尿病性ケトアシドーシスを発症することがあります。そのような相対的なインスリン不足は、インスリン抵抗性の併発によって生じます。インスリン抵抗性は、膵炎、感染症、腎不全などが誘因となります。さらに、血糖上昇ホルモン、特にグルカゴン、の血中濃度の増加によって、インスリン不足が悪化して、脂質分解が亢進して、ケトアシドーシスを招きます。同時に肝臓では糖新生が促進されて、高血糖が悪化します。

インスリンの不足とインスリン抵抗性は、血中の血糖上昇ホルモンとともに、ケトン産生を刺激する作用があります。ケトン体(アセト酢酸とβヒドロキシ酪酸)の合成が亢進するためには、脂肪組織に蓄えられている中性脂肪からの遊離脂肪酸の動員と、肝臓における脂質代謝が脂肪合成から脂肪酸化とケトン産生へと切り替わるという変化が起こっています。インスリンは、脂肪分解と遊離脂肪酸の酸化を強力に阻害する物質です。インスリンの不足は、相対的であれ絶対的であれ、脂肪分解が亢進して、肝臓における遊離脂肪酸の利用が増加して、ケトン産生が促進されます。

血中のケトン体が増加し続けると、体内での緩衝均衡ができなくなって、代謝性アシドーシスに陥ります。細胞外液中でケトン体が増加すると、腎尿細管での再吸収の閾値を越えて、尿中にケトン体が漏出して、尿道による浸透圧利尿がさらに悪化して、電解質の喪失も増大します。インスリン不足は、それ自体でも腎臓からの水・電解質の過剰喪失の原因です。そうして、体内の水・電解質の過剰喪失が起こって、体液不足、組織への低還流、腎前性高窒素血症が進行します。

高血糖では、血漿の浸透圧が上昇して、浸透圧利尿のため、電解質よりも水が重度に失われます。そのため、どんどん血漿浸透圧が上昇します。血漿浸透圧の上昇によって、水分が細胞外に移動して、細胞も脱水状態となります。重度のアシドーシス、高浸透圧と浸透圧利尿、脱水、電解質異常という糖尿病性ケトアシドーシスによる代謝異常は、生死に関わる状態になることもあります。

症状

糖尿病性ケトアシドーシスは、頻繁にみられる合併症です。感染や炎症、インスリン抵抗性疾患に関連して起こることが多い疾患です。進行性の病態で、飼い主が、おやっ?、と思う時期がさまざまで、その時点での症状も色々です。

初期は、多飲・多尿、多少、体重減少が現れます。飼い主は、気付かないことも多く、気付いても、それほど重大なこととは感じていないことが多々あります。

全身症状(元気消失、食欲不振、嘔吐)は、ケトン血症と代謝性アシドーシスの発現や悪化で起こります。重症度は、代謝性アシドーシスの重症度や合併症に、直接的に関連します。

糖尿病の初期症状から、糖尿病性ケトアシドーシスへの進行は、早くて数日、遅ければ数ヶ月掛かることもあります。しかしながら、一度ケトアシドーシスに陥ってしまうと、7日以内に重篤な症状が現れてしまいます。脱水、抑うつ、頻脈、嘔吐、虚脱や口臭でアセトン臭がすることもあります。緩徐な深い呼吸は、著しい代謝性アシドーシスの特徴です。腹部の疼痛や腹部膨満、膵炎の併発もよくあります。

先ずは、糖尿病を然るべき症状と高血糖、尿糖に基づいて診断をした上で、ケトン尿が認められれば糖尿病性ケトーシスと診断して、さらに代謝性アシドーシスを伴えば、糖尿病性ケトアシドーシスと診断します。

治療

状態がいい場合
全身症状がないか、軽度であるなら、重度の異常はみつかりません。代謝性アシドーシスが軽度なら、インスリンを1日3回、ケトン尿が消失するまで、皮下投与します。状態がいいなら、輸液療法は必要ありません。

インスリンの投与量は、血糖値に基づいて調節します。低血糖を予防するために、インスリン投与時に、1日のカロリー摂取量の1/3程度の食事を与えましょう。

症状と血糖値、尿ケトンをモニタリングします。血糖値が低下すれば、ケトン産生も減少しますが、ケトンが代謝されて尿ケトンが消失するには、インスリンを投与してから、48~96時間程度必要です。それを超えてケトン尿が持続しているなら、併発疾患があるか、インスリンが不足して脂肪分解やケトン産生が抑制されていないと考えられます。

ケトーシスが是正されて、症状が安定したら、インスリン療法を開始しましょう。

重篤な糖尿病性ケトアシドーシスの場合
元気消失、食欲不振、嘔吐を呈するようだと、重症です。積極的な治療を行います。脱水、抑うつ、虚弱、重度の代謝性アシドーシスもみられるはずです。治療の目標は、脂肪分解、ケトン産生、糖新生を抑制するためのインスリン投与喪失した水と電解質の補給アシドーシスの是正糖尿病性ケトアシドーシスの要因を特定インスリンの持続投与による低血糖の防止、です。

疾病そのものの影響と同様に、過度の治療によっても、浸透圧や生化学的な問題が生じますので、早急に正常な状態に戻すことが必ずしも適切な治療とは限りません。過度の治療は、有害な場合もあります。目安として、24~48時間をかけて、徐々に回復させる方が、治療が成功する可能性は高くなります。

治療方針を立てるためには、詳細な血液検査、尿検査が必要です。さらに、糖尿病性ケトアシドーシスの治療を開始したら、隠れている併発症を特定するための検査を行っていきましょう。膵炎や甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症などが、特に注意する合併症です。

糖尿病性ケトアシドーシスの初期治療

輸液療法









生理食塩水を投与
開始時は60~100mL/kg/日
  (尿量、水分喪失量、水和状態をみながら調節)
カリウム補充:血清K濃度による
リン酸補充:1.5mg/dL以下なら補充。
  カルシウムを含まない輸液剤に添加して
  0.01~0.03mmol/kg/時で投与
ブドウ糖補充:血糖値が250mg/dL未満であれば、
  5%ブドウ糖液を点滴
重炭酸塩補充:必要に応じて炭酸水素ナトリウムを投与(0.5mEq/kg)
インスリン療法





初期用量0.2U/kgを筋肉内投与
血糖値が250mg/dL以下になるまで、1時間毎に0.1U/kgを筋肉内投与
血糖値が250mg/dL以下になれば、皮下投与(0.2U/kg、BID)

血糖値が250mg/dL以下になるまで
75mg/dL/時を目安に血糖値を徐々に降下させる
補助療法

膵炎を併発することが多く、一時的に絶食・絶水
感染症の併発には、広域性非経口抗生剤を使用する
モニタリング





初期は、1~2時間毎に血糖値を測定
   血糖値が250mg/dL以下になれば・・・
2~4時間毎に、水和状態・呼吸・心拍数を評価して輸液量を調節
2~4時間毎に尿量、尿糖、尿ケトンを評価
6~12時間毎に電解質を測定
毎日、体重・ヘマトクリット値・体温・血圧を測定


 輸液療法

糖尿病性ケトアシドーシスの治療では、適切な輸液療法を開始することが大切です。体液の損失を補って、体液平衡を維持することは、心拍出量、血圧、各組織への血流を維持するために重要です。特に、腎血流量を改善することが重要です。一般に脱水した動物に輸液療法は有用ですが、特に、糖尿病では、欠乏したナトリウムとカリウムを補うこと、インスリン治療によるカリウムの低下を防ぐこと、インスリンを投与しなくても血糖値を下げる効果があること、で有益です。輸液療法で、ケトン生成を抑制することはできないので、インスリンの投与は必ず必要です。

初期の輸液は、生理食塩水を用います。血清カリウム濃度に従って、カリウムを適量、添加します。輸液は、脱水による不足分を、24時間以上掛けて、徐々に補正するとともに、維持量の水分と、進行する水分喪失分を補充していきます。ショック状態でない限り、急速輸液は行いません。

危機状態を脱したら、体液の不均衡を是正する範囲内で、徐々に補液量を減らしていきます。輸液量の目安は、維持量の1.5~2倍(60~100mL/kg/日)で開始して、その後は動物の水和状態、尿量、高窒素血症の程度、嘔吐や下痢の有無を考慮して、調節していきます。

カリウム補充
糖尿病性ケトアシドーシスでは、カリウム濃度は低値を示します。糖尿病性ケトアシドーシスの治療を開始すると、一時的にカリウム濃度は、更に低下します。点滴の再水和によって希釈されてしまうこと、インスリン作用による細胞内へのカリウムの取り込み増加、尿中への持続的な喪失、酸血症の改善による細胞内液分画へのカリウムの移動などが原因です。特に、治療開始後、24~36時間後に重度な低カリウム血症を起こしやすいので、注意が必要です。

点滴でカリウムを補給して、さらに、インスリン療法を始める際には、予防的にカリウムの積極的な投与が必要になります。例外は、乏尿性腎不全による高カリウム血症のときです。乏尿性腎不全では、糸球体の濾過能が回復して、尿量が増加して、高カリウム血症が解消するまでは、カリウムの補充を控えましょう。

通常は、測定した血清カリウム濃度に従ってカリウムの必要量を計算しますが、目安としては、輸液500mL中に20mEqのカリウムを添加して投与しておきましょう。生理食塩水には、カリウムは含まれていないので、そのままの量でいいですが、リンゲル液を投与する場合は、含まれているカリウム量を減じて添加しましょう。動物の状態が安定するまで、6~8時間ごとに、電解質を測定して、カリウムの補充量を補正しましょう。

リン酸補充
糖尿病性ケトアシドーシスの治療前は、リン濃度も低値傾向を示します。糖尿病性ケトアシドーシスの治療を始めると、24時間以内に、輸液による希釈、インスリン療法の開始による細胞内への移動、腎臓や消化管からの持続的な喪失で、血清リン濃度が重度に低下することがあります。

低リン血症の多くは無症状なんですが、溶血性貧血が起こることがあります。気付かず放置すると、死亡することがあります。運動失調や発作がみられることもあります。

溶血が確認されたり、リン濃度が1.5mg/dL以下になった場合、リン酸の補充が必要です。静脈内輸液で補充します。リン酸補充の推奨投与量は、0.01~0.03mmol/kg/時です。カルシウムを含まない輸液(生理食塩水)に添加しましょう。症状がみられないこと、リン酸を補充しても反応がわかりにくいこともあり、カリウムと同時に血清リン濃度を測定して、投与量を調整しましょう。

リン酸を過剰投与すると、医原性の低カルシウム血症と、それに伴う神経筋症状、高ナトリウム血症、低血圧、異所性石灰沈着が認められます。リン濃度とともに、カルシウム濃度も測定して、低カルシウム血症がみられたら、リン酸の投与を減量しましょう。腎機能の低下の疑いがあっても、リン酸の補充を控えましょう。

マグネシウム補充
糖尿病性ケトアシドーシスでは、マグネシウムの濃度も低値傾向を示します。初期治療で低下する傾向がありますが、糖尿病性ケトアシドーシスが改善すれば、治療しなくても回復します。マグネシウムの不足は、無症状であることが多いのですが、治療を始めて、24~48時間後に、元気消失、食欲不振、虚弱がありながら、低カリウム血症や低カルシウム血症がなく、その他の原因もみられないなら、低マグネシウム血症の治療を行います。

意識が朦朧とするようなアシドーシスを呈する場合は、重炭酸塩の投与を考慮します。意識明瞭な場合は、脳脊髄液のpHは正常なので、インスリンと輸液でアシドーシスは是正されます。腎血流量の改善でケト酸の尿中への排泄が増加しますし、インスリンでケト酸の産生は大きく減少して、アシドーシスが改善します。

 インスリン療法

ケトアシドーシスを改善できるのは、インスリンだけです。しかし、インスリンが過剰に投与されると、投与開始24時間以内に重篤な低カリウム血症、低リン血症、低血糖を引き起こします。それを防ぐためには、適切な輸液療法と、電解質と血糖値を頻繁に測定すること、必要に応じてインスリンの投与方法を変更します。

糖尿病性ケトアシドーシスの治療の最初は、輸液療法です。とにかく、血管を確保して、生理食塩水を点滴します。インスリン投与によって、血糖値、カリウム、リンが低下する前に、輸液療法による効果が現れるように、インスリン療法の開始は、点滴開始1~2時間後から始めるのがいいでしょう。電解質濃度によって、さらにインスリンの投与を遅らせるか、インスリンの初期投与量をどうするか、を決めていきます。カリウム濃度が、輸液開始から2時間後に正常範囲内であれば、インスリンの投与を始めます。低カリウム血症が続くなら、補液中にカリウムを補充して、インスリンの投与をさらに1~2時間、遅らせます。但し、輸液を開始してから4時間以内には、インスリン療法を始める必要があります。カリウム濃度を見ながら、初期用量を減量することも考えながら、インスリンを投与していきましょう。

個々の犬や猫の状態が異なるので、必要なインスリンの投与量を予測することは非常に難しく、犬や猫の要求量に合わせて投与量と投与回数を調節するためには、短時間作用型のインスリンを用いて、作用発現を早く、持続時間も短くすることが、糖尿病性ケトアシドーシスでは有効です。

間欠的筋肉内投与
重度の糖尿病性ケトアシドーシスでは、0.2U/kgのインスリンを筋肉内投与して、その後、1時間ごとに、0.1U/kgを投与します。低カリウム血症が懸念されれば、投与量を25~50%程度、減量します。投与部位は、後肢の筋肉に行います。インスリンの投与量が少量なら、10倍に希釈して構いません。

1時間ごとに、血糖値を測定して、インスリン投与量を調節しましょう。血糖値の目標値は、6~10時間かけて、血糖値を200~250mg/dLまで、徐々に低下させます。1時間ごとに、50mg/dLを低下させるぐらいがちょうといいと思います。血漿浸透圧は一定速度で徐々に低下して、急激に変動しないと思います。血糖値が低下して、ケトン産生のための脂肪分解や遊離脂肪酸の供給も効果的に抑制されます。血糖値は、ケトン濃度より速やかに低下します。一般的には、高血糖は12時間程度で是正されますが、ケトーシスの解消には、48~72時間程度かかります。

血糖値が250mg/dL以下まで降下したら、1時間ごとのインスリンの投与は止めて、4~6時間おきの筋肉内投与にします。水和状態がよければ、皮下投与にしても構いません。この時点で、輸液を5%ブドウ糖液にします。状態が安定して、食事ができるようになれば、血糖値を150~300mg/dLに維持しましょう。血糖値が、150mg/dL以下もしくは300mg/dL以上になれば、インスリンの投与量を増減します。ブドウ糖液を投与するのは、低血糖の危険性を避けられ、インスリンの間欠的な投与を継続できます。

低用量インスリンの持続点滴
インスリンの静脈内持続点滴も、血糖値の降下に効果的です。250mLの生理食塩水に、犬では2.2U/kg、猫で1.1U/kgを添加して、輸液療法で用いているのとは別の血管を確保して、10mL/時で投与します。そうすると、インスリンの投与速度が、犬では0.1U/kg/時、猫で0.5U/kg/時に設定できて、適切なインスリン濃度が保たれます。

インスリンは、ブラスチックの表面に付着するので、投与開始の前には、十分に点滴液に、希釈液を流しておきましょう。低カリウム血症が懸念されれば、初めの2~3時間はインスリンの点滴速度を下げます。投与速度は1時間ごとに血糖値を測定して調節します。血糖値の低下速度は、1時間ごとに50mg/dLが理想です。血糖値が250mg/dL以下になったら、インスリンの点滴は中止します。筋肉内投与か、皮下投与に切り替えます。血糖値が250mg/dL以下になれば、ブドウ糖液を投与にするのは、間欠的筋肉内投与時と同様です。

間欠的筋肉内⇒皮下投与
最初に筋肉内投与した後、その後、間欠的に皮下投与する方法もあります。手間は少ないのですが、血糖値の低下が急激で、低血糖の危険性が高くなります。初めは、インスリン0.25U/kgを筋肉内に投与します。その後、4時間毎に筋肉内投与します。動物が水和したら、6~8時間ごとの皮下投与にします。脱水状態だと、インスリンの吸収性が悪くなるので、初めは筋肉内に投与する方がいいでしょう。筋肉内の投与は、だいたい1~2回で済みます。

最初の筋肉内投与時から、1時間ごとに血糖値を測定して、その後のインスリン投与量を、必要に応じて変更しましょう。血糖値は1時間ごとに、50mg/dLずつ低下するのが理想的です。それ以上に低下するなら、インスリンを25~50%程度、減量します。間欠的筋肉内投与時と同様に、血糖値が250mg/dL以下になれば、5%ブドウ糖液の点滴に切り替えて、血糖値を調節品がら、インスリンを投与していきましょう。

長期作用型インスリンの投与
犬や猫の状態が安定して、食事ができて、体液平衡が静脈輸液なしで維持できて、アシドーシス、高窒素血症、電解質異常が改善されるまでは、長期作用型インスリンは投与すべきではありません。投与量や投与回数は、血糖値を測定して決めましょう。

 併発疾患

糖尿病性ケトアシドーシスの治療では、併発症の管理が必要になる場合が多々あります。糖尿病性ケトアシドーシスで頻繁にみられる併発疾患は、細菌感染、膵炎、うっ血性心不全、腎不全、胆管肝炎、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能亢進症など、インスリン抵抗性疾患です。併発症によって、治療の内容が異なってきます。

併発疾患の治療とともに、インスリン療法は必ず行います。ケトアシドーシスは。インスリン投与によってのみ、改善します。経口摂取ができないならば、インスリン療法を継続して、ブドウ糖を点滴して血糖値を維持しなければなりません。インスリン抵抗性を引き起こす併発症があると、インスリンの効きが悪くなりますが、それでもインスリン療法は遅らせたり中止したりしません。そのためには、併発症を治療して、疾患を除去する必要があります。

 治療の副作用

糖尿病性ケトアシドーシスの治療による副作用が多々あって、低血糖、脳浮腫による中枢神経症状、重度の低カリウム血症、重度の高ナトリウム血症、高クロール血症、低リン血症による溶血性貧血などが挙げられます。原因は、過剰な治療、不適切な管理と監視、血液検査による再評価の時期を適切に行わないことが考えられます。

糖尿病性ケトアシドーシスは複雑な病態を呈する疾患で、管理が適切でなければ致死率が高くなります。治療による副作用を可能な限り抑えて、治療を成功させるには、全ての異常所見を、徐々に(24~48時間かけて)正常に戻していくこと、動物状態を頻繁にチェックして、適宜、血糖値や電解質を測定する必要があります。糖尿病性ケトアシドーシスの治療を開始して24時間は、1~2時間ごとに血糖値を測定して、6~8時間ごとに、電解質濃度を測定しましょう。その結果を元に、輸液量、インスリン投与量、重炭酸塩などの治療を調節していく必要があります。


予後

糖尿病性ケトアシドーシスは、治療が困難な疾患の一つで、どんなに予防的な処置をしても、入念な治療を行っても、致死的な結果になってしまうことがあります。重症の糖尿病性ケトアシドーシスの30%程度は、死亡すると認識しておいた方がいいかも知れません。

一般的な死因は、乏尿性腎不全、壊死性膵炎、重篤な代謝性アシドーシス、治療による副作用として脳浮腫や低カリウム血症が生じた場合、です。しかしながら、治療を論理的に進めて、注意して動物状態を観察しながら管理して行けば、予後はよい結果が得られると思います。