循環器系の疾患/心血管系の検査/粘膜
粘膜
粘膜の色調と毛細血管再充満時間を調べて、抹消血管の血流を評価しましょう。
通常、口腔粘膜で行います。
どうしても口を触らせてくれない動物なら、包皮や膣、眼の結膜でも評価可能ですので、口腔粘膜に色素沈着がある動物の場合は、他の部位での評価をしてあげましょう。
毛細血管再充満時間は、粘膜が白くなるまで指圧して、その色の戻り具合で評価します。
正常な動物なら2秒以内に元の色に戻ります。
脱水症状や心拍出量の低下による末梢交感神経緊張の亢進と血管収縮で、血液の再充満時間は延長します。
粘膜の蒼白は、貧血や末梢血管の収縮で生じます。
貧血の場合でも、血流に変化がなければ、再充満時間に変化はありませんが、通常、粘膜蒼白状態では、指圧による色調に変化がないため、評価不可能です。
粘膜色の異常の原因・鑑別診断は下記のとおりです。
- 粘膜の蒼白
- 貧血
- 心拍出量の低下/交感神経の緊張亢進
- 粘膜の充血・暗赤色
- 多血球血症(赤血球増加症)
- 敗血症
- 興奮
- 末梢血管を拡張させるその他の因子
- 粘膜のチアノーゼ
- 肺実質の疾患
- 気道閉塞
- 胸腔疾患
- 肺水腫
- 右心・左心短絡の先天性心奇形
- 換気不全
- ショック
- 低音暴露
- メトヘモグロビン血症
- 分離性チアノーゼ
- 逆性動脈管開存・・・頭部と前肢には正常な血液が循環するが、身体の後部には、動脈管を通って下行大動脈に脱飽和血液が混入して循環してしまう。
- 粘膜の黄疸色
- 溶血
- 肝胆道系疾患
- 胆管閉塞
- 点状出血の場合、血小板の疾患を疑う必要があります。
- チアノーゼは、血液10L中に5g以上の不飽和ヘモグロビンが存在すると生じる状態です。定量的な問題ですので、貧血の動物では低酸素症であってもチアノーゼを生じないことがあります。
- 赤血球増加症の動物では、分離性チアノーゼを確認しましょう。包皮や膣粘膜と口腔粘膜との色調を比較してください。
- 口腔粘膜や結膜は、黄疸が確認される部位でもあるので、溶血や肝胆道系の疾患にも要注意です。