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感覚器系の疾患/ぶどう膜の疾患

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ぶどう膜の疾患

ぶどう膜は、眼球壁の中膜(血管膜)で、虹彩・毛様体・脈絡膜から構成されています。ぶどう膜には、血管が豊富に分布しているので、炎症が起こりやすくなっています。

ぶどう膜炎

前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)
外傷、強膜や角膜の炎症から波及する続発性、特殊な疾患による炎症、免疫介在性の過敏反応などが原因として考えられますが、はっきりしていないことが多い疾患です。犬は、過敏症が最も多いようで、以下、外因性、内因性の要因で占められています。猫は、FIP、FeLV、FIV、トキソプラズマ症、過敏症が主な原因です。

症状は、涙が多くなって、眼がショボショボしたり、痛みがあったり、眼瞼が痙攣したり視力障害を伴うこともあります。種々の検査で、毛様充血、角膜混濁、角膜血管新生、虹彩充血、縮瞳、虹彩後癒着、前房内滲出、角膜後面沈着物などを確認して診断していきますが、詳しく確定診断できないことがあります。

原因がはっきりしていれば、原因となる疾患の治療を行います。原因がはっきりしない場合は、ステロイド剤や、非ステロイド性の消炎剤を投与して、散瞳薬(アトロピンなど)と生物質の点眼を行います。角膜に外傷や潰瘍があれば、ステロイド製剤は使いません。

重度の虹彩毛様体炎では、初期に適切な治療をしないと、癒着を起こして治らないことや、緑内障を引き起こすことがあります。

後部ぶどう膜炎(脈絡膜炎)
眼球後方の脈絡膜に炎症が起こる疾患です。しばしば網膜にも炎症が波及します。軽度の脈絡膜炎は無症状ですが、重度の場合は、網膜剥離や眼底出血を起こして、視力を喪失することがありますので、注意しましょう。

原因は、犬では免疫介在性、猫はFIP、FeLV、FIV、トキソプラズマ症、クリプトコッカス症などの感染が挙げられます。急性の炎症がみられるなら、ステロイド剤を服用させて、全身的な消炎治療を行います。細菌や真菌の感染が疑われるならば、ステロイド剤は症状を悪化させますので、抗生剤や抗真菌薬を投与して治療します。

Vogt-小柳-原田様疾患(ぶどう膜皮膚症候群)

秋田犬など特定の犬種で好発する炎症性の疾患で、メラニン細胞が多く分布する脈絡膜、虹彩、毛様体を、自身の免疫系が攻撃してしまうことで発症する疾患です。急性期は、羞明、眼の疼痛、角膜混濁、毛様充血などの虹彩毛様体炎の症状と、視力障害や網膜剥離などの脈絡膜炎の症状がみられます。ステロイドによる消炎治療を積極的に行って安定させます。安定した後も、免疫抑制剤を用いて維持治療を継続します。

急性期や再発時の炎症をうまくコントロールできないと、水晶体への虹彩の癒着や炎症産物による隅角の閉塞が起こって、続発性の緑内障を発症して、失明することもあります。眼球以外のメラニン細胞(眼瞼や鼻鏡など)が傷害を受けて、黒い部分が次第に肌色に退色することもあります。