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感覚器系の疾患/結膜・角膜の疾患

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結膜・角膜の疾患

角膜は、外部からの光を透過させる働きを持っています。なので、角膜は透明できれいな球面であることが必要です。角膜の透過性が失われると、視覚障害や視覚喪失を起こします。角膜は、外部環境と直接接しているので、表面を潤す涙とともに、外部環境の危険から眼を守る役目も持っています。

乾性角結膜炎

涙が減少することで、角膜や結膜の表面に炎症が起きる疾患です。ブルドッグやパグなどによくみられます。原因には、犬ジステンパーウイルス感染、外傷、放射線治療による影響、薬物感作などがあります。特発性に起こったり、自己免疫性疾患によるものと考えられる、原因の明確でない場合もあります。診断には、シルマー試験で、涙の量を調べます。

初期は、結膜の充血や浮腫を起こして、痛みを示しますが、病気の進行とともに痛みを感じなくなります。結膜に色素が沈着して、角膜にも血管が進入してきて、色素沈着がみられるようになります。粘液膿性の眼脂が眼瞼に付着します。

治療は、涙液補充の目的で、人工涙液を点眼します。脂成分を補うために、眼軟膏も使用します。細菌感染も疑われるなら、抗生物質の点眼薬も用います。必要に応じて、涙液分泌を促進する薬剤の投与、免疫抑制剤の点眼や軟膏を使用することもあります。

結膜炎

眼瞼結膜や眼球結膜の炎症として、頻発する眼疾患です。結膜は、外界に露出しているので、他の粘膜よりも刺激を受けやすいために、炎症を起こしやすいと考えられます。

原発性結膜炎の原因は、細菌やウイルスの感染が一般的です。その他、寄生虫、点眼剤による刺激、毒物・化学物質に対するアレルギー反応なども考えられます。二次性結膜炎の原因としては、涙液の欠乏によるドライアイ、眼瞼の疾患、睫毛の疾患、角膜炎、緑内障、眼周囲の異常などが考えられます。

症状は、眼脂など過剰な分泌物、充血、流涙、不快感などを示します。点眼薬で改善することがほとんどですが、原因を治療することが重要です。

角膜炎

色素性角膜炎
何らかの原因で角膜に炎症が起こって、血管新生と色素沈着が発生したものです。パグ、シーズー、ペキニーズなどの短頭種に好発して、角膜表面の過度の露出や、涙液減少、眼瞼内反症などが原因として考えられます。

慢性表層性角膜炎
パンヌスって言いますけど、角膜への血管の侵入、炎症を伴う肉芽組織の増生を起こす疾患です。瞬膜にも症状がでることが多くて、進行すると視覚障害を発生します。通常、両眼にみられます。

原因には、自己免疫系、紫外線が関与していると思われます。多くはステロイド剤や他の免疫抑制剤の投与で改善しますが、完治することはなく、長期の治療が必要となることを飼い主さんにも説明しておかなくてはなりません。

猫の好酸球性角膜炎
慢性アレルギー刺激に対して、猫が過剰な反応を起こして生じる疾患のようです。原因はよくわかりません。好酸球性皮膚炎との関連性も示唆されています。

症状は、角膜周辺部に隆起した血管新生病巣が、ゆっくりと中心に向かって進行していくものです。進行すると、角膜全体を覆ってしまうこともあります。チーズ様の付着物、角膜浮腫、表層性の血管新生、結膜炎、粘液性の眼脂などもみられます。

症状と角膜表層の付着物などを検査して、好酸球や好酸性顆粒を確認して診断します。治療は、ステロイド点眼薬が効果的です。難治性の場合や再発をくり返す場合は、酢酸メゲステロールを投与します。

角膜潰瘍

角膜組織の欠損を伴う角膜疾患の中で、角膜上皮だけでなく、実質まで欠損したものが角膜潰瘍です。角膜上皮のみの欠損は、角膜びらん、と分類されます。

原因は、細菌(特に、シュードモナス属)感染を受けたときに、細菌の持つ蛋白質分解酵素によって角膜実質が傷害されたり、角膜上皮細胞や線維芽細胞、多核白血球、細菌の出す酵素(コラゲナーゼ)で角膜実質が溶かされて、潰瘍が発生します。真菌感染や涙液不足でも起こることがあります。

羞明、眼瞼痙攣、流涙、角膜浮腫、眼脂、角膜への血管侵入が症状として認められます。フルオレスセイン染色を行って、角膜上皮の欠損を確認します。潰瘍がデスメ膜まで進行して、角膜実質がすべて欠損しているとフルオレスセインに染まりませんので、注意しましょう。角膜潰瘍部から、検体を採取して、細菌培養と同定も行っておきましょう。

細菌検査の結果に基づいて、抗生物質の点眼と内服を行います。コラゲナーゼ阻害薬として、アセチルシステイン点眼薬(パピテイン)を滴下します。他では、EDTAや自家血清点眼を使用することもあります。眼を擦らないように、エリザベスカラーを装着した方がいいでしょう。治療中は、2~3日毎にフルオレスセイン染色を行って、角膜上皮の形成度合いを調べておきましょう。

デスメ瘤

角膜は、表面から上皮・実質・デスメ膜・内皮の4層構造になっています。デスメ膜瘤は、角膜潰瘍が進行して、デスメ膜に達したときに、デスメ膜が隆起して、透明な小水疱を形成した状態です。放置すると、デスメ膜が破れて角膜穿孔を起こす恐れがあります。

治療は、自家血清点眼を行ってみますが、多くは、角膜縫合、結膜弁被覆法、瞬膜弁被覆法、眼瞼縫合などの外科処置を行います。

角膜ジストロフィー

両眼の角膜にみられる遺伝性の疾患です。角膜の白斑が特徴的です。ビーグル、ハスキー、シェルティ、キャバリア、エアデールテリアが好発犬種です。長円形や円形をした白色の混濁が、角膜の中央部に見られるのが特徴です。

病巣が白くみえるのは、角膜にコレステロール、リン脂質、中性脂肪が沈着するためです。この疾患によって、不快感を示すことはなく、視覚の喪失もありません。診断には、血液検査でコレステロール値、HDL・LDL、トリグリセライド値を測定して、副腎機能検査、甲状腺機能検査も行って全身性疾患を除外します。残念ながら、治療法はありません。