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消化器系の疾患/基本的な治療と方針

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基本的な治療と方針

輸液療法

ショック、脱水、電解質や酸塩基の平衡異常の際には、輸液療法を行うのが当たり前の処置です。血液検査の結果、電解質の異常値を認識して補正していきます。

嘔吐をすると、低カリウムや低クロール性の代謝性アルカローシスになることがあります。腸の内容物が失われると低カリウム血症となり、アシドーシスやアルカローシスになります。嘔吐をした犬や猫は、通常、低カリウム血症になっているはずですが、副腎皮質機能低下症や無尿症腎不全の場合は高カリウム血症が認められることがあります。低カリウム血症の場合には、塩化カリウムを生理食塩水に加えて投与していきます。

推奨される輸液へのカリウム補充量

血漿カリウム濃度
(mEq/L)
輸液に添加する
KCl量(mEq/L)
3.7 ~
3.0 ~ 3.7
2.5 ~ 3.0
2.0 ~ 2.5
≦2.0
10 ~ 20
20 ~ 30
30 ~ 40
40 ~ 60
60 ~ 70

カリウムの投与速度は、0.5mEq/kg/時を超えないようにして、心電図をモニタリングしておく方が安全です。

重度の血液循環量の減少や、腸閉塞、嘔吐、イレウスで腸からの水分吸収ができない場合には、非経口的な水分補給が必要になります。非経口的な水分補給には、静脈内投与のほかに、皮下投与、骨髄内投与があります。皮下投与は、ショック状態を脱して、皮下からの液体吸収が可能で、それで対応可能なら行いましょう。重度に脱水した犬や猫は、短時間で皮下投与の液剤の吸収ができないこともあります。状態が悪い場合は、皮膚を切開してでも静脈内投与が必要です。状態が悪く、どうしても静脈の確保が難しいときには骨髄内投与を行うことがあります。

ショック状態と判断される犬には、静脈内投与開始1時間で約90mL/kgを目安に輸液します。猫は過水和状態に陥るので、55mL/kgを超えないようにしましょう。ショックには乳酸加リンゲル液か生理食塩水が適当です。
重度のアシドーシスで急死する可能性がある犬には、重炭酸塩を投与することが必要になります。

点滴液の維持量としては、50mL/kg/日前後を目安に投与していきます。電解質に変化がないよう、低カリウム血症にならないよう注意して、輸液を選択し、投与しましょう。食欲不振や嘔吐、下痢、長期の輸液療法を受けている場合は、カリウムを補充すべきです。嘔吐がなければ、経口的なカリウム補充でも構いません。

脱水状態にある場合は、欠乏している水分量を推定して補ってあげましょう。2~8時間掛けて補うのが適当です。下痢や嘔吐、排尿によっても水分が失われますが、思っているよりも喪失量は多いです。輸液の維持量が適切かどうかは、体重の管理で可能です。体重が進行性に減少しているなら、輸液療法が不適切ということが考えられます。浮腫がみられたり、肺の捻髪音が聴取されたら、過水和状態にあると考えていいでしょう。

栄養管理

食事療法による疾患の管理が可能な場合もあります。アレルゲンの除去食、低アレルゲン食、脂肪制限食、高繊維食などが用いられます。食事による疾患の改善効果は、1~2週間以上の時間が掛かることが普通ですので、じっくり取り組むように指導しましょう。

アレルゲン除去食が抗生剤反応性腸症の治療や管理に役立つことがあります。脂肪を制限した食事は、膵外分泌障害や膵炎、リンパ管拡張症の動物に適用されます。下痢が続く場合に、消化のよい食事に切り替えます。繊維質の多い食事は大腸性の下痢に有効ですし、便秘を軽減することもあります。

犬や猫が、食事ができない場合には、栄養補給が必要です。経鼻チューブで流し込むか、胃瘻チューブを設置する必要があったりします。必要栄養量を計算して、給餌していきましょう。1日2~4時間ごとに給餌するところから始めて、1日3~4回で、1日の必要カロリーを摂取できるように回数を減らしていくのが理想的です。

1日あたりの必要栄養量の計算

基礎エネルギー要求量(kcal/日)30×[体重kg]+70
維持エネルギー要求量(kcal/日)基礎要求量×補正係数

補正係数

 
ケージレスト1.251.1
術後1.31.12
外傷1.51.2
敗血症1.71.28
重度の火傷2.01.4

薬物治療

 制吐薬

急性の嘔吐や嘔吐で状態が悪くなっている場合は、制吐薬で対処しましょう。
軽い嘔吐程度なら、制酸薬でも抑えられることがあります。

末梢性の制吐薬は、中枢性の制吐薬に比べて効果が弱いのですが、軽症なら反応することがあります。副交感神経遮断薬(アトロピンなど)が利用されますが、非経口投与(皮下注射)でもあり、制吐作用以外の副作用もあり、嘔吐のひどい犬や猫には効かないので、制酸薬(シメジチンなど)でいいでしょう。

嘔吐を止めることが重要な場面では、効果の明確な中枢作用型の制吐薬を投与する方が的確です。抗精神病薬であるクロルプロマジンは、化学受容器引金帯(CTZ)への遮断作用で制吐効果を発現します。鎮静作用が認められない用量で制吐作用がありますが、嘔吐を抑えるのに、わざわざ抗精神病薬を投与するのもなぁ・・・、常習性もあるし・・・
メトクロプラミド(プリンペラン)あたりで十分でしょう。経口も静注も可能です。しかしながら、メトクロプラミドは、CTZの遮断とともに、胃の緊張と蠕動運動の亢進作用もあります。それによって制吐作用があるのですが、下痢症状を示していて腸管の蠕動運動が亢進している上に嘔吐がある場合と、胃や十二指腸で閉塞が疑われる場合には、投与してはいけません。
セトロニン受容体拮抗薬であるオンダンセトロンは、メトクロプラミドで止められない嘔吐にも有効なことがあります。人では抗癌剤による嘔吐に対して用いられています。
マロピタント(セレニア)は、嘔吐中枢および化学受容器引金帯(CTZ)に分布するニューロキニン1(NK1)受容体とサブスタンスPの結合を阻害して制吐作用を示します。酔い止めにも使用されます。
抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)も嘔吐を抑えることがありますが、効果は非常に弱いです。猫の酔い止めとして効果が得られることもありますが...

主な制吐薬

薬剤用量機序
アトロピン0.02~0.05mg/kg、sc副交感神経遮断(抗コリン作用)
クロルプロマジン0.3~0.5mg/kg、scまたはivフェノチアジン誘導体
メトクロプラミド


0.25~0.5mg/kg、poまたはsc
1~2mg/kg/日を持続点滴
(重度の嘔吐に)
ドーパミン(D2)受容体遮断


オンダンセトロン0.1~0.2mg/kg、ivセロトニン受容体拮抗作用
マロピタント2mg/kg、poニューロキニン1受容体拮抗作用
ジフェンヒドラミン2~4mg/kg、po抗ヒスタミン作用


 制酸薬

胃の酸性度を下げてやる必要がある場合に制酸薬を使用します。症例としては、胃潰瘍、腎疾患に伴う胃酸過多、肥満細胞腫、ガストリノーマなどです。制酸薬には制吐作用はないのですが、胃酸過多の改善が健康な胃の状態を保つので、結果として嘔吐が起こらない、ということがあります。

胃酸の制御が重要な場合にまず適用するのは、ヒスタミン2(H2)受容体拮抗薬(シメチジン・ファモチジンなど)です。ヒスタミンによる胃の杯細胞の刺激を阻害することで効果が発現します。シメチジンは肝臓のチトクロームP450の阻害作用があるので、肝疾患の疑いがある場合は、ファモチジンを用いる方がいいでしょう。主に、胃潰瘍・十二指腸潰瘍が適応症になります。ステロイドや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)による潰瘍にも効果的です。但し、予防効果は低いので、投薬中止後に処方する方が効果的です。

プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール、ランソプラゾールなど)は、胃酸分泌の最終経路を阻害します。H2受容体拮抗薬が効かない胃・食道の逆流やガストリノーマに対してよく用いられます。

主な制酸薬

薬剤用量機序
シメチジン
ファモチジン
5~10mg/kg、po・iv
0.5mg/kg、po・iv
H2受容体拮抗作用

オメプラゾール
ランソプラゾール
0.7~1.5mg/kg、po
1mg/kg、iv
プロトンポンプ阻害薬


 腸粘膜保護薬

スクラルファート(アルサルミン)が代表的な薬です。胃や十二指腸の潰瘍、びらんを有する犬や猫に適用されます。食道炎にも有効です。非吸収性の、ショ糖硫酸エステルアルミニウム塩で、潰瘍表面のタンパク質と結合して被膜を形成します。露出した腸管壁にしっかりと吸着して腸粘膜を保護してくれます。

ペプシンの阻害作用もあります。ペプシンは胃腸粘膜を破壊してしまうことがあります。スクラルファートは薬剤を吸着する作用もあるので、できれば他剤との併用を避けて、1~2時間程度、他の薬剤と時間をあけて投与といいでしょう。酸性下で最適な活性が得られるので、空腹時に投与するのもいいかも知れません。

問題点としては、経口剤であるが、投与される動物の多くは嘔吐している状態ということ。その観点からは、H2プロッカーと併用するのがいいかも知れません。それと、便秘になることがあります。

代表的な胃腸粘膜保護剤

薬剤用量特記事項
スクラルファート

0.5~1g(犬)・po
0.25g(猫)・po
便秘の可能性。他の経口薬を吸着。
予防効果は低い。既にある潰瘍の治療に。


 消化酵素の補充

消化酵素剤は、膵炎や膵外分泌不全症に適用されます。原因を特定できない下痢にも、経験的に用いられます。パンクレアチンが代表的な消化酵素です。

散剤が効果的です。フードにスプーン1~2杯の消化酵素を振りかけてやることで摂取させます。膵外分泌不全症の動物では、リパーゼが分泌されないので脂肪が分解されません。なので、食事は低脂肪食にしてあげることが必要です。そうすることで下痢が改善することが多いでしょう。

消化酵素剤が、胃酸や小腸の細菌によって不活化されるのを防ぐ目的で、制酸剤や抗生剤と併用すると、効果が大きくなると考えられます。

 消化管運動調節薬

下痢を起こしている動物に対して、食物の腸の通過時間を延長させる作用を持つ薬剤です。下痢の症状があって、腸管の蠕動運動が亢進している場合に、鎮痙作用を持つ薬剤を投与するのが効果的です。代表的な薬剤は、プチルスコポラミン(ブスコパン)です。

胃腸など消化管の運動は、副交感神経の作用で亢進しています。副交感神経の活性は、アセチルコリンという神経伝達物質によって強まります。プチルスコポラミンは、アセチルコリンの働きをおさえることで、副交感神経の刺激を弱めます(抗コリン作用)。胃腸や胆管の異常な運動(痙攣)がおさえられて、痛みが和らぎます。
プチルスコポラミンには、内臓の平滑筋の痙攣を抑えたり、胃酸の分泌を抑える作用もあります。

逆に、腸管運動が抑制されている場合や便秘気味の場合には、消化管の運動を亢進させる薬を服用させますが、それがメトクロプラミドです。メトクロプラミドは、制吐薬でもあるわけですが、腸の蠕動運動が亢進している症例に嘔吐を抑える目的での処方はしない方がいいでしょう。

代表的な消化管運動調整薬

薬剤用量機序
ブチルスコポラミン0.3~1mg/kg、po・sc抗コリン作用


 抗炎症薬と抗分泌薬

下痢による体液の喪失を減少させることや、食事療法や抗菌薬に反応しない腸の炎症を制御するために、抗炎症薬や抗分泌薬を使用します。

急性腸炎や結腸炎・潰瘍性大腸炎に対して用いられる5-アミノサリチル酸製剤(サラゾピリン)が代表的な薬剤です。サルファ剤と簡易的に呼ぶこともありますが、アスピリンの仲間である5-アミノサリチル酸とスルファピリジン(抗菌薬サルファ剤)をアゾ結合で化学反応させた化合物です。結腸の細菌がこの結合を切断して、5-アミノサリチル酸が障害された結腸粘膜に作用すると考えられています。なので、小腸疾患には効果を示しません。

犬で、50~60mg/kgを投与しますが、ステロイドとの併用投与で、用量を抑えることが可能です。猫では、15mg/kg/日が適量ですが、サリチル酸による嗜眠、食欲不振、嘔吐、発熱、呼吸促迫に注意しましょう。効果は2~3日で現れてきますが、投与期間は2週間以上継続します。結腸炎の症状がなくなったら、減薬していきます。投薬を止めると症状が発現する症例では、最低用量の投薬を継続しましょう。

高品質のアレルゲン除去食に反応しない慢性的な消化管の炎症(炎症性腸疾患)に対しては、ステロイド剤の投与を行います。プレドニゾロンを2mg/kg/日程度の高用量で始めて、漸減して最低用量をみつけて長期投与を行うのが通常です。
プレドニゾロンで効き目が悪いと、デキサメタゾンを使ったりしますが、副作用が強いので注意しましょう。経口投与が難しければ、長時間作用型のステロイド注射(デポ・メドロールなど)を使うのも一つです。ステロイド剤の投与は、猫の炎症性腸疾患に有効ですが、消化器疾患の悪化を招くこともあります。犬で医原性クッシング症候群を起こすことがよくありますが、猫でも投与量が多いときには気をつけましょう。

投与方法として、注腸(座薬)を行うこともあります。比較的吸収が早く、効果的に結腸の炎症部位に薬剤を到達させることができます。但し、炎症が重度で、腸の粘膜の透過性が亢進していると薬剤が体内に吸収されてしまうことがあるのを考えておきましょう。

食事療法もステロイド剤による治療にも反応しない重症の炎症性腸疾患に対しては、免疫抑制剤を使用することがあります。シクロスポリンやアザチオプリンが使われます。アザチオプリンは副作用で骨髄抑制があるので注意しましょう。

シクロスポリンは、炎症性腸疾患のほか、リンパ管拡張症、肛門周囲瘻の犬にも用いられることがあります。経口投与で、3~5mg/kgで、1日2回の投与が標準プロトコールですが、体内動態が不安定であることと、非常に高価な薬です。ケトコナゾール(3~5mg/kg)と併用するとシクロスポリンの代謝が阻害されて、服用量を抑えることが可能です。

 抗菌薬

病院に来た犬や猫に対して、むやみやたらと抗菌薬を処方する獣医さんがいますけど、やめときや(笑)。特に、一般的に消化器疾患の動物に対して日常的に抗菌薬を使うことはありません。明らかに感染症を疑う場合や抗菌薬の必要な疾患の治療中である場合は別ですよ。原因不明の腸炎や胃炎を呈する動物に対して抗菌薬を処方しても、ほとんどの場合、回復しません。治っても自然に治っているだけです。抗菌薬により腸内細菌の多くが死滅することがあるので、下痢を起こす原因にもなります。

消化器症状を有しながら、誤嚥性肺炎、発熱、敗血症を示唆する白血球像、十度の好中球減少症、抗生剤反応性腸症、クロストリジウム性結腸炎、吐血、メレナがみられる場合、疑われる場合は、抗菌薬を用います。急性腹症でも、原疾患が特定されるまで抗菌薬で治療を行うのは妥当な処置です。急性結腸炎の場合も、クロストリジウムが原因のことが多いので、抗菌薬で治療を開始しておくのは間違いではありません。二次性の敗血症が起こる危険性の高い場合は抗生剤を利用しましょう。セファロスポリンを第1選択にするのが最もいいはずです。

抗生剤反応性腸症では、好気性菌と嫌気性菌の両方に効果がある広域スペクトルの抗菌薬を処方します。タイロシン(20~40mg/kg)がよく効くようです。テトラサイクリン(20mg/kg)も効果が高く、メトロニダゾールと併用して用いられることもあります。
メトロニダゾールは、炎症性腸疾患に対しても一般的に用いられる抗菌薬で、嫌気性菌や原虫類(ジアルジア)、カンピロバクターに対しても抗菌作用を持っています。

時折、サルモネラ菌や腸出血性大腸菌など、特定の菌による腸炎が引き起こされることがありますが、それでも抗菌薬で改善が早くなるということはありません。

 プロバイオティクスとプレバイオティクス

用語の説明としては、

  •  プロバイオティクス療法
    •  生きた細菌や酵母を有益な効果を得る目的で食物の中に加えること
  •  プレバイオティクス療法
    •  特定の細菌を特異的に増殖もしくは減少させる目的で、特殊な食物性物質を加えること
  •  シンバイオティクス療法
    •  プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時に用いること

です。
ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、エンテロコッカスが一般的に使用されて投与されている細菌です。これらの細菌が、消化管のToll様受容体を刺激して効果を発現すると考えられます。効果のある期間はバクテリアを投与している期間のみで、大量の細菌が必要のようです。なので、ヨーグルトに含まれている程度のラクトバチルスでは効果的ではありません。

 駆虫薬

急性の下痢でも慢性の下痢でも、消化管内寄生虫の感染が原因となることがあります。虫卵やシストが確認されてもされなくても、経験的に駆虫薬を処方することは妥当な処置です。

主な駆虫薬

薬剤(品名)用量対象寄生虫
メトロニダゾール
(フラジール、アスゾール)
25~50mg/kg
5日間投与
ジアルジア
カンピロバクター
ピランテル・フェバンテル・プラジクアンテル(ドロンタールプラス)1錠/10kg;犬回虫・条虫・鞭虫・鉤虫
ピランテル・プラジクアンテル
(ドロンタール)
1錠/4kg;猫回虫・鉤虫・条虫
セラメクチン
(レボリューション)
6mg/kg;猫回虫・鉤虫
スルファジメトキシン
(アプシード)
初回 50mg/kg
2回目以降 25mg/kg
コクシジウム
トリメトプリム・スルファジアジン
(トリプリッセン)
30mg/kg
10日間投与
コクシジウム


 浣腸・緩下薬・寫下薬

浣腸には、洗浄浣腸と滞留性浣腸があります。結腸に裂傷や穿孔があるときにはやってはいけませんが、予測は難しいです。

滞留性浣腸は、肛門から投与した物質を効果が発揮されるまでとどめておきます。便秘の場合に結腸内で、徐々に便を柔らかくするために行います。
洗浄浣腸は、腸内の便を取り除くためにやります。温水をある程度大量に直腸に注入して排泄させたりします。

病的に出ない場合、下剤や緩下剤を用いて行います。用いる薬剤としては、ラキソデートやラクツロースがあります。
ラキソデートは、結腸の運動を活発にして、腸からの水分吸収を抑えて便を出やすくします。造影剤や術後の排泄補助にも使います。液体で、飲み水に滴下することで服用させます。
ラクツロースは浸透圧性緩下剤です。ラクツロースは2糖類で、結腸の細菌で分解されて吸収されない分子に変化します。
直腸からは3倍程度に希釈して、15~30mL程度を注入すると反応します。経口投与も可能で、小型犬では0.5mL/日、大型犬で5mL/日を目安に、便が出るまで、1日2~3回、投与するといいでしょう。猫は腸管での水分の吸収性が高いので、多めに投与します。5mL程度を投与しても大丈夫です。ラクツロースは、肝性脳症の症状を緩和するためにも使われます。アンモニア濃度を下げる働きがあります。

流動パラフィンのような、吸収のされないすべりをよくする無毒な製剤を投与することで、便のすべりがよくなって便通がよくなることが多いです。浣腸でも経口投与でも、動物に負荷も少なく、効果的です。