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内分泌・代謝系の疾患/マグネシウム

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電解質異常(マグネシウム)

高マグネシウム血症

血清マグネシウム濃度が、2.5mg/dLを超えると、高マグネシウム血症です。腎臓が過剰なマグネシウムを排泄するので、臨床上、問題となることはありません。腎不全や腎後性高窒素血症、過剰投与で起こることがあります。

 症状

症状
マグネシウム濃度が大きく上昇すると、元気消失、衰弱、低血圧といった症状が出てきます。心電図上では、PR間隔の延長、QRS幅の増大が現れて、マグネシウム濃度が12mg/dLを超えるような状態では、呼吸抑制や無呼吸、不整脈、心停止が起こります。このような高値では、マグネシウムが非特異的カルシウムチャンネル遮断薬として作用します。

治療
外因性のマグネシウムの補給を中止します。腎機能が正常なら、経過観察で大丈夫です。腎機能障害を併発しているなら、腎機能改善を目的とする治療を行います。ループ利尿薬(フロセミド)の投与で、マグネシウムは尿中に排泄されます。

低マグネシウム血症

血清マグネシウム濃度が、1.5mg/dL以下になると、低マグネシウム血症と考えます。マグネシウムの吸収低下、下痢や嘔吐による喪失、多尿や利尿薬による尿中への排泄増加、細胞外から細胞内への移動で起こります。マグネシウムの喪失も、カリウムの喪失を起こす因子によって左右されることが多く、アルカローシス、インスリン、グルコースの投与によって起こることがあります。

 症状

多くは無症状で、症状が出るときは、多くはマグネシウム濃度1.0mg/dL以下です。元気消失や食欲不振、嚥下困難や呼吸困難、筋線維性攣縮、発作、運動失調、昏睡などがみられます。循環器、神経筋や代謝性の症状がみられます。

低カリウム、低ナトリウム、低カルシウム血症の併発は、よく起こります。マグネシウムは、体内の微量金属ですが、Na-K ATPaseポンプにおいて、ATPを含む全ての酵素反応の補因子がマグネシウムで、マグネシウムが欠乏すると、全身性にカリウムが消耗してしまい、それによって生じた低カリウム血症では、カリウムを補充しても反応しません。

低マグネシウム血症に併発する低カルシウム血症は、マグネシウムの欠乏で上皮小体からのPTH分泌が抑制されて起こるものです。

マグネシウムが欠乏すると、心筋細胞の静止膜電位を低下させて、プルキンエ線維の興奮を増加させるので、不整脈が生じます。ECGでは、PR間隔の延長、QRS幅の増大、ST-segmentの低下、T波の先鋭化がみられます。不整脈としては、上室頻拍、心室頻拍、心室細動が起こる可能性があります。ジギタリス誘発性の不整脈(伝導障害)を起こしやすくもなります。

 治療

これといった治療法はありません。食事が可能な犬や猫なら、低マグネシウム血症に陥ることはありません。極度の食欲不振、体液を喪失している症例、糖尿病性ケトアシドーシス、難治性の低カリウム血症や低カルシウム血症、利尿薬やジギタリスを用いて治療をしている心不全症例などに対しては、治療が必要となることがあります。

治療は、硫化マグネシウムや塩化マグネシウムを、5%ブドウ糖液に添加して、それぞれ、0.75~1mEq/kg/日、0.3~0.5mEq/kg/日となるように、点滴投与します。事前に腎機能を評価しておくこと、高窒素血症なら投与量を50~75%減少させること、ジギタリスと併用しないこと、が重要です。

治療目標は、不応性の低カリウム血症と、低カルシウム血症の改善です。電解質濃度は、毎日測定しましょう。マグネシウムは、低カルシウム血症を生じることがあるので、必要に応じて、グルコン酸カルシウムを静脈内投与して治療を行います。

マグネシウム投与による副作用は、低血圧、房室ブロック、脚ブロックがあり、過剰投与では呼吸抑制や心停止を来たします。その場合も、グルコン酸カルシウムを投与します。
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