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内分泌・代謝系の疾患/リン

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電解質異常(リン)

高リン血症

血清リン濃度が6.5mg/dL以上になると、高リン血症です。腸管からのリンの吸収増加、尿中へのリン排泄の減少、細胞内から細胞外へのリンの移動によって生じます。犬や猫で最も多い原因は、腎不全による二次的な腎臓からの排泄低下です。

 症状と治療

症状
高リン血症は、それ自体で症状が起こるわけではないですが、基礎疾患の存在を示唆しています。急速にリン濃度が増加すると、低カルシウム血症を引き起こして神経筋症状が出ます。持続的な高リン血症は、二次性の上皮小体機能亢進症、線維性骨形成異常や骨外での異所性石灰沈着が生じます。

治療
原因が腎不全であれば、治療は積極的な輸液療法を行います。持続的なリン濃度の増加が起こるので、リンを制限した処方食を与えたり、リン酸吸着剤を経口投与することが効果的です。基礎疾患を改善させれば、高リン血症は認められなくなります。

低リン血症

血清リン濃度が3mg/dL以下になると、低リン血症となりますが、1.5mg/dL以下にならないと症状は出ません。腸管での吸収低下、尿中への排泄増加、細胞外から細胞内へのリンの移動で起こります。

細胞内外のリンの移動は、カリウムと似ていて、糖尿病性ケトアシドーシス治療を開始して24時間以内に発症することが多いのが特徴です。それは、カリウムを細胞内へ誘導する因子(アルカローシスやインスリン、グルコースなど)が、リンも細胞内に誘導するためです。

 症状

リン濃度が1.5mg/dL以下になると、症状が出ますが、主に血液や神経筋に障害が出ます。リン濃度が下がると、赤血球中のATPが減少するので、赤血球の脆弱性が亢進して溶血性貧血が起こりますが、通常、リン濃度が1mg/dL以下になるまでは、溶血はしません。しかし、溶血性貧血を治療しないと、命に関わりますので、注意しましょう。神経筋症状では、衰弱、運動失調、発作、腸閉塞に続発する食欲不振や嘔吐がみられます。

 治療

基礎疾患を改善すると、低リン血症もなくなりますが、溶血などの症状が認められて、リン濃度が1.5mg/dL以下で、さらに進行しそうな場合に、リン酸を経口投与して治療します。目標値は、リン酸濃度2mg/dL以上です。但し、高カルシウム血症や、乏尿、組織壊死がみられる場合や、腎機能が疑わしい場合は、リンの投与は行いません。

糖尿病性ケトアシドーシスなどで、重度な低リン血症を補正するときは、リン酸カリウムを用いて、静脈内投与で治療することもあります。リン酸を過剰投与すると、神経筋症状や高ナトリウム血症、低血圧、転移性の石灰沈着が起こるので、注意が必要です。

リン濃度の変化がある時は、同時にカルシウム濃度や場合によってはイオン化カルシウム濃度を測定して、高カルシウム血症に気をつけましょう。