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呼吸器系の疾患/咽喉頭の疾患

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咽喉頭の疾患

臨床症状

咽喉頭の疾患の症状をみていきましょう。

 咽頭

咽頭の疾患による特徴的な症状は、喘鳴、逆くしゃみ、息が詰まったような音、から吐き、嚥下困難などです。喘鳴は、咽頭の軟部組織の過剰、すなわち軟口蓋過長症や腫瘤などで発生するいびきや鼻を鳴らしたような音がします。逆くしゃみ、息が詰まったような音は局所組織の刺激や二次的な分泌によって起こります。嚥下困難は、腫瘤などの物理的な障害・閉塞が原因であることが一般的です。

咽頭疾患の鑑別診断
短頭種気道症候群
軟口蓋過長
鼻咽頭ポリープ
異物
腫瘍
膿瘍
肉芽腫
気道外腫瘤

最も一般的な犬の咽頭の疾患は、短頭種気道症候群と軟口蓋過長です。特に短頭種では、軟口蓋過長が起こりやすいので十分注意しましょう。フレンチブルドッグやパグなどが、夜にいびきをかいて寝ていて、時折呼吸が止まるようなら、ほぼ軟口蓋過長でしょう。軟口蓋過長は、短頭種以外でも起こります。猫で一般的な咽頭の疾患は、悪性リンパ腫と鼻咽頭ポリープです。鼻腔の疾患とも関連しているので、合わせて理解しておきましょう。

 喉頭

喉頭の疾患では、呼吸困難と喘鳴が特徴的な所見です。
呼吸困難は気道の閉塞の結果で生じます。喉頭の疾患というのは数週間から数ヶ月かけて進行するんですけど、現れる症状は急性の呼吸困難を呈することが多いので気をつけましょう。

症状を悪化させる要因(発熱、興奮、運動)が呼吸の負荷を大きくさせ、呼吸の負荷が増加することで喉頭での過剰な陰圧が生じて周囲の軟部組織を気道内に吸引してしまい、喉頭の炎症や浮腫を引き起こします。さらに気道の閉塞が重篤なって呼吸負荷が悪化していきます。


呼吸困難

喘鳴音は狭窄した喉頭の開口部を通る空気の乱れで生じる音です。吸気時に認められることが多くなります。
喉頭の疾患を持っている動物は、誤嚥性の肺炎の併発には注意しましょう。特に喉頭麻痺がある症例では要注意です。

喉頭疾患の鑑別診断
喉頭麻痺
喉頭の腫瘍
閉塞性喉頭炎
喉頭虚脱
喉頭における膜の形成
外傷
異物
気道外の腫瘤
急性喉頭炎

喉頭疾患は猫よりも犬で多い疾患です。犬で最も多いのは喉頭麻痺です。喉頭の腫瘍は犬でも猫でも発生します。閉塞性喉頭炎や急性喉頭炎は、原因や病態が明らかでない疾患です。ウイルスやその他の感染、異物、過度に吠えることが原因ではないかと思われます。

疾患

 喉頭麻痺

喉頭の開口部分に披裂軟骨ってのがあって、呼吸の度に閉じたり開いたりするんですけど、その披裂軟骨が吸気時に外転不全が生じて胸腔外気道(外部気道)が閉塞する疾患が喉頭麻痺です。

喉頭麻痺を起こす原因
特発性
腫瘍・外傷による神経の損傷
多発性神経症
  特発性・先天性、免疫介在性、甲状腺機能低下症などによる
重症筋無力症

喉頭麻痺の原因には、特発性が最も多い。披裂軟骨の外転筋は、反回喉頭神経に支配されているので、この神経を障害を与えるような外傷、炎症、腫瘍・腫瘤なども原因となり得ます。多発性の神経-筋障害も喉頭麻痺を伴うことがあります。

披裂軟骨と声帯での気道狭窄で呼吸困難と喘鳴音が起こります。慢性的な疾患で、飼い主が喘鳴音や声の変化に気付くこともありますが、ほとんどの場合、急性症状を示します。
喉頭麻痺
運動、興奮、環境温度の上昇によって代償機能が失われ、努力性呼吸が悪化し、気道内圧が陰圧になり、周囲の軟部組織が気道内に吸引され、咽頭の浮腫や炎症が起こり、さらに呼吸状態を悪化させる悪循環が生じます。チアノーゼ、失神が起こって死亡することもあります。
呼吸困難を呈する犬では、迅速な救急治療処置が必要です。処置後に落ち着いたとしても、喉頭麻痺は進行性の疾患であり完全によくなることはないので、外科的な治療がベターです。外科手術をしない場合は、プレドニゾロン(0.5mg/kg)とケージレストによる内科管理で改善できることもあります。
合併症が生じると予後が悪くなるので要注意です。特に、誤嚥性肺炎には注意しましょう。

 短頭種気道症候群

短頭種

短頭種の犬(ブルドッグやパグなどなど)によく認められる解剖学的異常による上部気道閉塞症候群のことを短頭種気道症候群と呼んでいます。
外鼻孔の狭窄、軟口蓋過長が特徴的な所見で、長期間の上部気道閉塞によって吸気時の努力呼吸が増加して、喉頭小嚢の外転や、最終的には喉頭虚脱が起こってしまいます。流涎、吐出、嘔吐などの消化器症状の併発が一般的にみられますので、体重管理を含めて、これら治療を怠らないようにしましょう。

胸腔外気道(上部気道)での閉塞は、当然ながら呼吸に影響を与え、呼吸音が大きくブヒブヒ言いながら呼吸をしたり、喘鳴音、努力性呼吸が認められ、チアノーゼ、失神を引き起こすこともあります。運動、興奮、外気温の上昇でも悪化します。短頭種が夏の熱中症でよく運ばれてくるのは、短頭種気道症候群が原因です。
吸気時の努力性呼吸は喉頭・咽頭部の粘膜に、二次的な浮腫・炎症を引き起こして、喉頭小嚢の外転や喉頭虚脱を増大させ、声門をさらに狭窄させて症状を悪化させます。呼吸困難を呈している犬には救急治療で症状を軽減してあげてください。喉頭虚脱まで起こると、予後が悪くなります。

治療には、解剖学的な欠陥を外科的に矯正すること(外鼻孔の拡大や軟口蓋の切除)、が効果的です。若いうちに手術を済ませると予後はより良好になりますから、去勢手術や避妊手術の際に、相談しておくのもいいでしょう。

臨床症状を悪化させる原因(過度な運動・興奮、外気温の上昇)を極力取り除き、内科的な管理を行うことである程度の改善は見込めます。抗炎症用量のプレドニゾロン(0.5mg/kg)の使用とケージレストを行いましょう。

 閉塞性喉頭炎

炎症性細胞が喉頭へ浸潤し、喉頭の不整な増生、充血、腫脹を生じることがあります。そのため上部気道の閉塞が起こります。肉芽腫性の腫瘤になることもあるので、腫瘍との鑑別診断をしっかりとしておきましょう。外科的に除去する必要がある場合もあります。
通常は、プレドニゾロン(1mg/kg)を投与します。

 腫瘍

喉頭由来の腫瘍は稀です。喉頭に近接した組織由来の腫瘍(甲状腺癌やリンパ腫)が一般的であり、喉頭を圧迫したり喉頭に浸潤したりすることで喉頭の構造を変形させ、結果として上部気道閉塞が現れます。

努力性呼吸、喘鳴、チアノーゼ、失神、声の変化がみられます。喉頭外の腫瘤は頸部の触診でわかりますが、喉頭原発の場合はX線、エコー、CT検査で確認が必要です。閉塞性喉頭炎、鼻咽頭ポリープ、異物、炎症性肉芽腫、膿瘍との鑑別をしましょう。

治療には外科手術と放射線、化学療法を併用する王道治療しかないようです。