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感染症/原虫感染症

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原虫感染症

バベシア症

犬のバベシア症は、Babesia canisやBabesia gibsoniの感染で起こるのが一般的です。バベシアは、マダニによって媒介され、犬の体内に入ると赤血球に寄生して、進行性の貧血を起こして、病原性の強いものに感染すると死に至ります。

病原性のBabesia canis・Babesia gibsoniの感染後、数日から数週間の潜伏期間を経て、発症します。原虫は、赤血球内で複製されて、血管内溶血性貧血を引き起こします。寄生虫や変化した自己抗原に対する免疫介在反応は、世血性貧血を悪化させます。マクロファージが活性化されると、発熱、肝脾の腫大が認められます。赤血球の急速は破壊で、重篤な低酸素症が生じます。旧跡には、播種性血管内凝固(DIC)が起こることもあります。病状の重篤度合いは、感染した種や犬の免疫状態に依存します。慢性や不顕性感染として経過することもありますが、ステイロイドの投与、脾臓摘出が慢性疾患を活性化することもあります。

  •  症状
    • 意外と不顕性感染が多いのですが、症状が出ると、貧血と発熱が起こります。それによって、粘膜蒼白、頻脈、頻呼吸、抑うつ、食欲不振となります。黄疸、点状出血、肝臓・脾臓腫大を呈することがありますが、病期とDICの存在に依存します。
    •  急性期には、重度の貧血、DIC、代謝性アシドーシス、腎疾患が認められて、死に至ることがあります。貧血は、免疫介在性溶血性貧血です。
    •  慢性の感染犬では、通常、食欲不振と体重減少が起こります。

診断は、原因不明の貧血があれば、ともかく疑っておきましょう。血液検査で、再生性貧血、高ビリルビン血症・ビリルビン尿、ヘモグロビン尿、血小板減少、代謝性アシドーシス、高窒素血症が検出されます。血液塗抹標本によって、赤血球内の虫体を確認できれば診断の助けになりますが、必ずしも見つけられるものではありません。検査機関で、抗体検査をしてもらいましょう。

  •  治療
    •  必要なら、輸血します。基本的には、まず、アシドーシスに対する炭酸水素ナトリウムの投与、輸液療法など、支持療法を行います。
    •  ジミナゼンアセチュレート(商品名:ガナゼック)を、1~3mg/kgで、3日間連続、筋肉内投与するのが、よく行われる治療です。運がよければ、感染を排除できますが、再発もあります。効果もありますが、副作用も強く、しかしながら、急性な発症では、犬が死亡することがあるので、犬の状態を見て投与します。
    •  ガナゼックを使わないときは、クリンダマイシン(15mg/kg、経口、BID)もしくはアジスロマイシン(10mg/kg、経口、SID)を、少なくとも10日間の投与で症状を改善することができることがあります。感染の排除は無理ですけど。

人への感染と予防
バベシアは、マダニを介して犬に感染しますが、人には感染しません。予断ですが、マダニを介して人には、重症熱性血小板減少症候群というウイルス感染が問題になってますので、気をつけましょう。

予防は、マダニを駆除するか、普段からフロントラインやマイフリーガードでマダニの感染を予防しておくことが必要です。また、感染したことのある犬は、免疫抑制剤の投与や脾臓摘出を避けましょう。犬同士の輸血を行う際には、感染有無を調べてから行わないと、輸血で感染することがあります。注意してください。


トキソプラズマ症(猫)

Toxoplasma gondiiが多くの脊椎動物に感染しますが、重要なのは、です。猫は終宿主であり、中間宿主でもあり、猫だけで、コクシジウムの生活環が完成して、環境抵抗性のオーシストを糞便中に排泄します。

スポロゾイトは、酸素と適度な環境温度・湿度に曝されて1~5日後に、オーシストの内部で発達します。タキゾイトは、急性増殖期に血液またはリンパの流れのなかで、細胞が壊れるまで細胞内で急速に増殖します。ブラディゾイトは、タキゾイトの複製が免疫反応で弱められたとき、宿主の腸管外組織で形成する持続性組織期のもので、徐々に分裂していきます。感染すると、中枢神経系、筋肉、内臓器官中で、ただちにシストが形成され、ブラディゾイトは、宿主が生存している間、組織内で生存します。

猫と、人や豚、ネズミなどなど、温血の脊椎動物は、トキソプラズマの3態のいずれかを経口摂取して感染しますし、胎盤感染もします。猫は、食糞しないので、食肉の際にブラディゾイトを摂取して感染するのが通常です。感染すると、3~21日後に、糞便中にオーシストが排出されます。胞子形成したオーシストは、環境中で数ヶ月から数年間、生存します。ほとんどの消毒薬に対しても抵抗性があります。

  •  症状
    •  初感染後の著しく激しいタキゾイトの細胞内増殖で、致命的な腸管外トキソプラズマ症の起こることがあります。肝臓、肺、中枢神経、膵臓組織が侵されます。
    •  経胎盤感染や経乳汁感染した子猫は、腸管外トキソプラズマ症でみられれる重篤な症状を呈して、多くは肺疾患や肝疾患で死亡します。
    •  散在性トキソプラズマ症では、抑うつ、食欲不振、発熱、腹膜からの滲出液、黄疸、呼吸困難がみられます。
    •  慢性症例では、免疫抑制が起きると、組織シスト中のブラディゾイトが急速に増殖して、タキゾイトとして全身に広がって症状がでます。猫白血病ウイルスや猫エイズウイルス、猫伝染性腹膜炎に感染している場合や、ステロイドやシクロスポリンを投与されている猫では、発症する危険があります。
    •  慢性トキソプラズマ症でも重篤な症状を示すことがあります。ブドウ膜炎、皮膚病変、発熱、筋肉の感覚過敏、不整脈を伴う心筋症、食欲不振、体重減少、痙攣発作、運動失調、黄疸、下痢や膵炎を呈する猫は、疑いましょう。

血液検査やX線検査結果で、トキソプラズマ症に特徴的な所見というのはありません。症状から疑われれば、検査機関で抗体価を測定してみましょう。虫体の検出も難しく、生前の確定診断は非常に困難です。

  •  治療
    •  必要に応じて、支持療法を行います。クリンダマイシン(10mg/kg、経口、BID)やトリメトプリム-スルホンアミド(サルファ合剤; 15mg/kg、経口、BID)を4週間の投与が推奨されます。
    •  眼や中枢神経系以外の症状は、上記投薬により、2~3日で消失します。眼や中枢神経系症状は、緩徐にしか反応しません。
    •  ブドウ膜炎には、局所的にステロイド点眼を行う必要があります。

発熱や筋肉の感覚過敏が、治療3日経っても軽減しないなら、他の原因も考慮しましょう。治療期間が4週間以下だと、症状の再発が起こりやすいのですが、上記の投薬ではトキソプラズマは生体内から完全に排除されないので、再発は一般的です。肝疾患、肺疾患、免疫応答が低下している猫は、予後不良です。

人への感染と予防
人への感受性はそれ程強くないですが、非常に重要な人畜共通伝染病です。妊娠期間中に母親が感染すると、子供にトキソプラズマ症が起こります。死産や中枢神経症状、眼疾患が一般的です。一般人の免疫応答が正常の人に感染した場合は、発熱、倦怠感、リンパ節の腫脹が起こります。エイズ患者の中には、免疫力低下のため、ブラディゾイトが活性化して、トキソプラズマ性脳炎が起こります。

人への感染は、胞子形成したオーシストや組織シストの経口摂取や、胎盤感染が一般的です。予防するには、生肉、生焼けの肉の摂取を避けること、です。猫の飼育が感染原因の一つであると考えられますが、その可能性は比較的低いと思われます。それは、猫が通常、最初の感染後、数日~数週間しかオーシストを排出しないこと、繰り返し排出することもないこと、猫は綺麗好きで糞便をつけたままで生活しないこと、などが挙げられます。

人への感染経路で重要なのは、豚肉です。豚は、トキソプラズマの中間宿主です。まず、豚肉は生で食べないこと。そして、豚肉を料理するときに、包丁などで、生の豚肉をトントンした後、洗浄せずに野菜を切ったりしてしまい、サラダとして食してしまうこともあるでしょう。まな板の洗浄も不十分だと、同じようなことが起こり得ます。豚肉を扱ったら、手もしっかりと洗浄しましょう。

トキソプラズマ症の予防
オーシストの摂取を防ぐ
  猫に生焼けの肉を与えない
  猫に狩をさせない
  排泄容器を常に清潔に保つ
  土を扱う仕事のときには手袋を着用する
  庭仕事の後は、手を綺麗に洗う
  新鮮な野菜は、食べる前に良く洗う
  生水は沸騰させてから飲む
  中間宿主への接触を避ける
組織シストの摂取を防ぐ
  全ての肉製品は加熱調理する
  生肉を扱うときは手袋を着用する
  生肉を扱ったら手を綺麗に洗う
  肉を3日間以上冷凍する


 犬のトキソプラズマ症

犬は、猫のように、トキソプラズマのオーシストを産生しないのですが、猫の糞便を摂取して、オーシスト感染する可能性があります。一応、注意しておきましょう。犬は、トキソプラズマよりもネオスポーラの方が重要だと思います。

  •  症状
    •  呼吸器、胃腸、神経筋肉系への感染があります。発熱、嘔吐、下痢、呼吸困難を示します。免疫抑制状態の犬が危ないので、注意しましょう。
    •  神経症状では、運動失調、痙攣、振戦、脳神経欠損、不全麻痺や完全麻痺がみられます。筋炎では、衰弱、不自然な歩行、筋肉の削痩を呈します。下位運動ニューロン機能障害による四肢不全麻痺や完全麻痺に急速に進行することもあります。神経や筋肉に症状を呈する場合は、ネオスポーラにも感染している可能性は高いです。
    •  心筋への感染は、心室性不整脈を起こす場合もあります。
    •  網膜炎、ブドウ膜炎、虹彩毛様体炎、視神経炎が起こることもありますが、猫に比べると頻度はずっと低いです。
  •  治療
    •  クリンダマイシン(10mg/kg、経口、BID)が第1選択です。サルファ合剤(15mg/kg、経口、BID)も用います。
    •  治療期間は4週間です。
    •  ブドウ膜炎には、局所的にステロイド点眼を行う必要があります。

予防
犬に食糞をさせないことと、肉やその副産物は、加熱調理してから与えること、です。


ネオスポーラ症

Neospora caninumによる感染で、主に犬に感染します。ネオスポーラは、組織コクシジウムで、トキソプラズマに類似した原虫です。犬の消化管内で有性生殖を行って、オーシストが糞便中に排泄されます。オーシストの排出が数ヶ月程度続くこともあります。

オーシストが排出されて24時間以内に、スポロゾイトがオーシスト内で形成されます。タキゾイトと、数百のブラディゾイトを含んだ組織シストが次の段階になります。犬の感染は、ブラディゾイトを経口摂取することで起こります。タキゾイトでは感染しません。経胎盤感染も起こります。病原体は、肺やその他多くの組織で複製されるのですが、神経筋疾患が見られることが多く、髄膜脳脊髄炎や筋炎を示します。タキゾイトの細胞内での複製による筋および中枢神経の壊死と炎症です。しばしば致死的な症状となります。

ステロイドによる免疫抑制作用が、組織シスト中のプラディゾイトを活性化して、症状を発現させることがあります。

  •  症状
    •  垂直感染した子犬にみられる後肢の過伸展を伴う上行性麻痺が、最もよく認められる所見です。多くの症例で筋肉の萎縮が起こります。生後間もなく症状が出ることがあって、新生子の死亡も起こり得ます。
    •  老齢犬でも発症することがあり、初期感染か潜伏感染かわかりませんが、呼吸器症状や肺炎、心筋炎、嚥下障害、潰瘍性皮膚炎、肝炎の起こることがあります。

中枢神経組織への感染は、単核細胞の浸潤を引き起こします。免疫介在性の要因が示唆されます。治療しなければ、死にます。確定診断には、虫体を検出することなのですが、臨床徴候、トキソプラズマ症の除外、抗体検査などで仮診断するしかないでしょうか。

  •  治療と予後
    •  多くの犬は死亡します。
    •  クリンダマイシン(10mg/kg、経口、BID)、トリメトプリム-スファジアジン(サルファ合剤; 15mg/kg、経口 BID)を単独もしくは併用で反応してくれることがあります。4週間の投与期間が必要です。
    •  重度の神経症状を呈する犬は、予後不良です。できれば、伸筋硬直が起こる前に治療を開始しましょう。

人への感染と予防
今のところ、人畜共通伝染病ではないようです。犬は、牛との疫学的関連性があるようですので、牛の胎盤や生肉を食べさせない方がいいでしょう。母犬に感染疑いがあるなら、繁殖には供しないことです。疑いのある犬に対するステロイドの投与を行わないことも予防的な措置となります。


ぺパトゾーン症

日本では、Hepatozoon canisが、犬のヘパトゾーン症を起こす原虫で、これもマダニ(クリイロコイタマダニ)によって伝播されます。猫やツキノワグマにも感染するようです。

ペパトゾーンは、宿主の体内で、好中球と単球中に、マクロガメートとミクロガメートを出現させます。宿主の吸血をしたマダニが原虫を摂取すると、マダニ体内でオーシストが発育します。それを犬が経口摂取することで感染が成立します。犬の体内で、スポロゾイトが放出されて、脾臓、肝臓、筋肉、肺、骨髄の単核食細胞と内皮細胞に感染して、最後にマクロメロントとミクロメロントからなるシストを形成します。ミクロメロントは、ミクロメロゾイトに成長して白血球に感染して、ガモントになります。組織内で化膿性肉芽腫性炎を起こして症状を呈します。感染犬は、ペパトゾーンの感染源・宿主になります。

  •  症状
    •  発熱、体重減少と知覚過敏がみられます。
    •  一部の犬では、食欲不振、貧血と粘膜蒼白、抑うつ、眼や鼻の分泌物、血様の下痢が認められます。

血液検査では、左方移動を伴う好中球性白血球増加症所見があります。慢性炎症から、正球性正色素性非再生性貧血がみられます。この疾患に特徴的な所見が少なく、確定診断は、血液塗抹にて好中球や単球中のガモントの確認です。

  •  治療
    •  原虫を組織内から除去することはできませんが、治療で症状は改善します。
    •  トリメトプリム-スルファジアジン(サルファ合剤; 15mg/kg、経口、BID)や、クリンダマイシン(10mg/kg、経口、BID)の単剤、もしくは併用の2週間投与が有効です。
    •  非ステロイド系抗炎症薬で、不快感が解消されることがあります。ステロイドは、免疫を抑制して症状を悪化させるので、投与を避けましょう。

人への感染と予防
人へは感染しません。予防は、マダニの駆除と感染予防を徹底することです。

リーシュマニア症

人畜共通伝染病です。通常は、リーシュマニア属を媒介するサシチョウバエに刺されて感染が拡大します。日本では発生していません。日本にはサシチョウバエが生息していないので、病原体が持ち込まれても感染が拡大する可能性は低いのですが、薬物常習者が感染してると、注射針の共用で、人から人に感染している例があり、これはサシチョウバエを経由せずに感染します。そんな万が一がありますので、注意が必要です。

リーシュマニアは、犬、人や他の哺乳類の皮膚、粘膜、内臓に疾病を引き起こす鞭毛虫です。有鞭毛のプロマスチゴートがサシチョウバエの体内で発育して、サシチョウバエの吸血した際に、宿主に入り込みます。プロマスチゴートは、マクロファージに取り込まれて広がります。1ヶ月~7年の潜伏期の後、無鞭毛のアマスチゴートを形成して、皮膚病を生じます。輸血によっても感染して、母子感染も起こります。細胞内原虫は、強い免疫反応を誘発します。

  •  症状
    •  食欲が正常、もしくは亢進してるにも関わらず、体重減少があり、多飲・多尿、抑うつ、嘔吐、下痢、発咳、点状出血、斑状出血、鼻出血、くしゃみ、下血が発現します。
    •  診察にて、脾種、リンパ節の腫脹、顔面の脱毛、発熱、鼻炎、皮膚炎、肺音の亢進、黄疸、腫脹した関節、ブドウ膜炎や結膜炎などが確認されます。
    •  皮膚病変として、鼻平面部、耳介、耳に過角化、落屑、肥厚、粘膜皮膚の潰瘍、皮内小結節がみられます。

犬は内臓リーシュマニア症が多くて、感染犬の多くは死亡しますし、慢性腎不全を発症すると、安楽死を選択する方が賢明です。猫は不顕性感染です。

血液検査で、高グロブリン血症、低アルブミン血症、蛋白尿、肝酵素活性の上昇、高窒素血症、血小板減少、リンパ球減少、左方移動を伴う白血球増加所見がみられます。確定診断が得られるのは、リンパ節吸引、骨髄吸引や皮膚押捺標本中にアマスチゴートを確認したときです。

  •  治療
    •  アロプリノール(15mg/kg、経口、BID)による治療が行われます。日本では痛風の薬として処方(←人です)されてます。それ以外では、マルボフロキサシンがいいようです。

投薬で、症状の改善がみられるこもあるようですが、再発するようです。体内から排除できる治療方法はありません。慢性腎不全症例の予後は悪いです。

人への感染と予防
人畜共通伝染病として危険なのは、犬が保有宿主になることですが、病変部のアマスチゴートと直接感染しても、人への感染はないです。感染犬を刺したサシチョウバエが感染して、そのサシチョウバエに人が刺されて感染するのが通常の感染経路です。なので、サシチョウバエとの接触を避けるのが唯一の予防方法です。

日本では発生してないので、気にしなくて結構です。


サイトークスゾーン症

原因は、Cytauzoon felisで、アメリカでみられる致死的な猫の原虫症です。マダニが媒介します。感染後、5~20日の潜伏期の後、発症します。単核食細胞中にシゾントとマクロシゾントが形成されます。感染マクロファージが静脈の内腔を覆って、そこから放出されたメロゾイトが赤血球に感染します。単核球の浸潤による血流障害と溶血性貧血の結果、発症します。感染は、外出する猫に起こります。

  •  症状
    •  発熱と食欲不振、呼吸困難、抑うつ、黄疸、粘膜蒼白が症状としてみられますが、場合によっては、来院時に死亡していることがあります。

血液検査で、再生性貧血、汎血球減少症、好中球性白血球増加症、血小板減少症がみられることがあります。塗抹標本で、赤血球に感染した病原体がみつかることもあります。

  •  治療
    •  必要なら、輸血をします。輸液療法による支持療法で対処します。
    •  ジミナゼン(ガナゼック;2mg/kg、im、7日間隔で2回投与)が効くことがあります。エンロフロキサシン(5mg/kg、経口か皮下、BID)を7~10日間、試みるのも効果が見られる可能性があります。

人への感染と予防
人には感染しません。
予防には、暴露を回避する方法しかありません。マダニを駆除して、予防もしておきましょう。猫はマダニに感染しにくいので、発生率は高くありません。

トリパノソーマ症

アメリカトリパノソーマとか、アフリカトリパノソーマとか言いまして、日本とは無縁の疾病なんですが、多くの哺乳類に感染する鞭毛虫です。人や犬への感染は少ないです。哺乳動物を宿主として、サシガメによって媒介されます。亀じゃないですよ。カメムシの仲間です。

発育期が3段階あって、宿主の血中で遊離してみられる有鞭毛期(トリポマスチゴート)、無鞭毛の細胞内形態(アマスチゴート)、媒介動物中でみられる有鞭毛の形態(エピマスチゴート)があります。サシガメが、吸血中に排便すると、エピマスチゴートが宿主に侵入して、マクロファージと筋細胞に取り込まれて、アマスチゴートに変態します。アマスチゴートは、細胞が破裂して循環血中にトリポマスチゴートを放出するまで、2分裂で増殖します。サシガメは、吸血時にトリポマスチゴートを摂取して、感染します。宿主の感染は、媒介動物を経口摂取すること、輸血や胎盤感染、経乳感染でも起こります。

  •  症状
    •  感染2~3週間後に、急性疾患を誘発します。犬での特徴的な症状は、心筋細胞に対する寄生虫誘因性損傷や免疫介在性の心筋症です。
    •  身体検査で、リンパ節の腫脹、粘膜蒼白、頻脈、脈拍欠損、肝腫、腹部膨満が認められます。
  •  治療
    •  アロプリノールが効果的なようです。痛風の薬ですけど。
    •  ステロイドで生存率が改善することもあるようです。必要に応じて、不整脈、心不全の治療を行います。急性感染を生き延びると、拡張型心筋症を発症します。

人への感染と予防
犬がトリパノソーマを宿主として保有して、媒介動物に病原体を伝播しますし、感染犬の血液は、人に対して伝染性があります。人のシャーガス病がこれです。アフリカ睡眠病がアフリカトリパノソーマで、ツェツェバエが媒介します。

サシガメへの暴露を減らし、ネズミなど、他の宿主との接触も避けることで予防します。日本では発生してないので、参考程度で。