感染症
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感染症について
感染症と言うのは、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫、プリオン等の病原体が高等生物に感染し、その宿主(人、犬、猫、牛、馬、羊、豚、鶏など)が病気を発症することです。バイ菌が体内に入って悪さをしてるということです。
病原体による病気が発症している状態を「感染している」と一般的に言いますけど、感染していても発症しない場合があります。感染後、病気は治って症状は治まっているものの、体内から病原体が排除されていないことを『持続感染』と呼びます。感染しても発症しない場合を『不顕性感染』。感染してもすぐに症状が出るわけではないのですが、感染後、症状が出るまでの期間を潜伏期間と呼び、発症したら『潜伏感染』という表現をします。
また、『日和見感染』という言葉があります。これは、健康な動物では起きない弱毒性の病原体による感染症が免疫力の低下などで引き起こされてしまうこと、を言います。
検査と診断
感染性の病原体によって起こる臨床症状は、日常的に認められます。致死的な疾患でないなら、経験的な治療で十分でしょう。予後に影響を与えるもの、予防を徹底すべき疾患、人畜共通伝染病として対処すべきものがあるなら、追加検査を行って、確定診断することが重要です。
感染因子を特定することが、最もいい方法ですが、因子によっては、特定が困難であったり、信頼性の低いものもあります。微生物を検出する方法と抗体を検出する方法が、一般的な検査です。
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抗菌薬治療
抗菌薬は、感染症を疑う症状が認められたときのみ、投与するべきです。何でもかんでも、何も考えず、とりあえず抗菌薬を投与する獣医師がいますが、症状を悪化させることもありますし、不用意な抗菌薬の使用は、薬剤耐性菌の出現を招きます。副作用にも注意しましょう。
抗生剤の主な毒性症状
抗生剤 毒性 アミノグリコシド 尿細管障害・神経筋接合部障害・聴覚毒性 セファロスポリン 免疫介在性血球減少症 クロラムフェニコール 骨髄再生不良性貧血・薬物代謝阻害 ドキシサイクリン 食道炎 マクロライド 嘔吐・下痢・胆汁うっ滞・食道炎 ニトロイミダゾール 好中球減少症・中枢神経毒性 ペニシリン 免疫介在性血球減少症 キノロン 若齢、成長期の軟骨形成不全 スルホンアミド 肝胆汁うっ滞・急性肝壊死
大赤血球性貧血・血小板減少症
過膿性・非敗血症性多発性関節炎
乾性角結膜炎・腎性結晶尿テトラサイクリン 尿細管障害・胆汁うっ滞
発熱・薬物代謝阻害
動物病院では、経験的に抗菌薬療法を行うのが一般的です。特に、単純な感染が示唆される感染症には、培養や感受性試験を行うことなく、抗菌薬を処方するのが通常です。重篤な感染症や、抗菌薬の反応性が悪い場合は、培養・感受性試験の結果が得られる前に、抗菌薬を選別して処方することになります。適切な治療法の選択は、動物の生死に影響しますので、感受性試験は重要です。中には、培養が難しく、経験的な投与をせざるを得ない病原体もあり、投薬の反応を見ながら、薬を選択することもあります。なので、経験的な抗菌薬の選択は、発症している組織・器官、症状から推察される病原体を知っておくことが必須です。院内で行える細胞診やグラム染色は、細菌の同定や抗菌薬の選択する手段として有用です。
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予防
感染症は、治療よりも予防を優先すべきです。最も有効な手段は、病原体への接触を避けること、です。感染症の病原体は、糞便、呼吸器分泌物、生殖器分泌物、尿、咬傷、掻傷、中間宿主、補菌動物によって伝播されます。無症状の感染動物と接触することで、感染するものもあります。
狂犬病やペストのような、人に伝播すると致死的な人畜共通伝染病もあります。人と動物との間の感染性病原体の伝播を防ぐことも、大変重要です。危険因子をしっかり理解して、感染を防御することが必要です。ワクチンで予防できる病原体もありますが、ワクチンは一律に有効なわけでもなく、全ての病原体をワクチンで防げるものでもありません。同時に、ワクチンは重大な副作用を引き起こすこともあります。
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感染症の各論を学んでいく上で、一つ一つの病気をランダムに選んで調べていくことは能率が低いでしょう。ここでは病原体の種類で分類します。他には、体の感染する部位別に考えてみたり、公衆衛生上の観点から分類したり、法律で定められてる重篤度で分けたりします。
細菌感染症
犬や猫には、多くの細菌感染症がありますが、各疾患に関連する細菌感染症は、各項目毎に記載しています。ここでは、バルトネラ症、猫のペスト、レプトスピラ症、マイコプラズマ、ウレアプラズマに関して、記載します。
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ウイルス感染症
犬と猫には、多くのウイルス感染症があります。パルボウイルスやアデノウイルス感染など、臓器特異的なウイルス性疾患については、各項目を見て下さい。ここでは、全身症状を引き起こす、犬ジステンパーウイルス、猫コロナウイルス、猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルス感染症について記載しています。
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リケッチア感染症
遺伝子解析が出来るようになって、リケッチア目のリケッチア科とアナプラズマ科に分類されていたものが再分類されました。エールリヒア属、アナプラズマ属、ネオリケッチア属の病原体は、遺伝的な分類と細胞指向性(単球指向性、顆粒球指向性、血小板指向性)によって分類されています。ここでは、犬と猫の病原体として重要なものを記載します。
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真菌感染症
人や物質が、世界的規模で流通するようになって、日本国内では発生していなかった病原性の強い微生物が、輸入感染症として重要視されるようになっています。これまで、海外の風土病であったものが、世界的なパンでミックを起こす可能性も否定できません。真菌感染症のなかでは、皮膚糸状菌が人畜共通伝染病として重要でしたが、コクシジオイデス症なども、病原性がペストに相当するほど、極めて強いものです。その他、クリプトコッカス症や、プラストミセス症、ヒストプラズマ症が、全身性の真菌感染症として知っておくべき疾患です。皮膚糸状菌やマラセチア菌などの真菌症は、皮膚疾患として記載します。
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原虫感染症
原虫の感染症においても、輸入感染症としての危険がありますので、日本では発生が見られないものも記載しておこうかと思います。サイトークスゾーン症やトリパノソーマ症、リーシュマニア症などは、日本での発生はありませんし、仮に輸入症例として持ち込まれても、媒介動物の関係上、それほど爆発的に流行するとは思われません。でも、獣医さんは知っておかなくてはならんのだよ。
ここでは、大変重要な原虫感染症であるバベシア症とトキソプラズマ症を中心に、記載しておきます。
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人畜共通伝染病(人獣共通感染症)
獣医領域で特に問題になるのが、人と家畜の両方に感染する病気です。人畜共通伝染病(人獣共通感染症、ズーノーシス)と言いますが、人とその他の脊椎動物との間で、共通に伝播される感染症、共有する感染症、自然に伝播される感染症のことです。
健康な人にも感染しますが、免疫不全の人には、より感染しやすく、症状も重篤になります。人の場合、エイズ患者もそうですし、高齢者、乳幼児、免疫介在性疾患や臓器移植、腫瘍に対する化学療法を受けている人もいますし、免疫抑制状態は一般的です。
ペットとの接触で、人畜共通伝染病に罹患することは少なく、わざわざペットを手放すことまで考えなくてはならないのは、稀です。獣医師としては、ペットを新しく飼う場合や買い続けることに対して、正確な情報を提供して参考としてもらい、飼い主の利益と危険性を正確に理解してもらわなくてはなりません。
多くの病原体は、ペットの滲出物や排泄物に、直接接触することで感染します。病原体によっては、ペットが病原体の媒介となって環境中に運び込まれるもの、例えばマダニなど、また、飼い主とペットが同じ環境下で病原体に感染するもの、例えば真菌症など、また、同じ媒介動物から感染するもの、例えばこれまたマダニなど、があります。
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人畜共通伝染病と言いますが、『畜』だと愛玩動物・家庭動物が含まれるのか?という意見があったりして、『人獣』という表現も使われます。伝染病というと、厳密には感染症が広く伝染していく状態を言うとのことで、やかましく議論されたのでしょう、結果、人獣共通感染症という呼び方が最近は多いようです。が、どっちでもいいです。大切なのは、内容をちゃんと知っとくこと、です。
主な疾病を挙げておきます。
- 細菌感染によるもの
- 炭疽・ブルセラ症・結核・サルモネラ症・大腸菌症・赤痢・豚丹毒・リステリア症・野兎病・ペスト・パスツレラ症・エルシニア症・カンピロバクター症・レプトスピラ症・ライム病 など
- 真菌によるもの
- クリプトコッカス症・皮膚糸状菌症 など
- ウイルスによるもの
- 狂犬病・日本脳炎・ダニ脳炎・ニューカッスル病・B ウイルス病・マールブルグ病・ラッサ熱・腎症候性出血熱・ウエストナイル脳炎・リフトバレー熱・SARS・高病原性鳥インフルエンザ など
- リケッチアによるもの
- Q熱・発疹熱・紅斑熱 など
- クラミジアによるもの
- オウム病 など
- 原虫によるもの
- トキソプラズマ症・アメーバ赤痢・クリプトストリジウム症 など
- 寄生虫によるもの
- 肝蛭症・肺吸虫症・日本住血吸虫症・有鈎条虫症・無鈎条虫症・広節裂頭条虫症・包虫症・旋毛虫症(トリヒナ症)・アニサキス症・有棘顎口虫症 など
- プリオンによるもの
- 牛海綿状脳症(BSE) など
以下に、家畜伝染病予防法に定められてる伝染病を記載しておきます。
家畜の伝染病発生の予防やまん延防止のため、監視すべき伝染病が定められています。簡単に理解するなら、法定伝染病は動物にも、人の健康や食生活にも大きな影響を与える重篤な伝染病、届出伝染病はその次に注意しておくべき伝染病、という理解でよろしいかと。
関係法規の項目もご参照ください。
法定伝染病(家畜伝染病)
- 牛疫
- 牛肺疫
- 口蹄疫
- 流行性脳炎
- 狂犬病
- 水胞性口炎
- リフトバレー熱
- 炭疽
- 出血性敗血症
- ブルセラ病
- 結核病
- ヨーネ病
- ピロプラズマ病
- アナプラズマ病
- 伝達性海綿状脳症(BSE)
- 鼻疽
- 馬伝染性貧血
- アフリカ馬疫
- 豚コレラ
- アフリカ豚コレラ
- 豚水胞病
- 家きんコレラ
- 高病原性鳥インフルエンザ
- ニューカッスル病
- 家きんサルモネラ感染症
- 腐蛆病
届出伝染病
- ブルータング
- アカバネ病
- 悪性カタル熱
- チュウザン病
- ランピースキン病
- 牛ウイルス性下痢・粘膜病
- 牛伝染性鼻気管炎
- 牛白血病
- アイノウイルス感染症
- イバラキ病
- 牛丘疹性口炎
- 牛流行熱
- 類鼻疽
- 破傷風
- 気腫疽
- レプトスピラ症
- サルモネラ症
- 牛カンピロバクター症
- トリパノソーマ病
- トリコモナス病
- ネオスポラ症
- 牛バエ幼虫症
- ニパウイルス感染症
- 馬インフルエンザ
- 馬ウイルス性動脈炎
- 馬鼻肺炎
- 馬モルビリウイルス肺炎
- 馬痘
- 野兎病
- 馬伝染性子宮炎
- 馬パラチフス
- 仮性皮疽
- 小反芻獣疫
- 伝染性膿疱性皮膚炎
- ナイロビ羊病
- 羊痘
- マエディ・ビスナ
- 伝染性無乳症
- 流行性羊流産
- トキソプラズマ病
- 疥癬
- 山羊痘
- 山羊関節炎・脳脊髄炎
- 山羊伝染性胸膜肺炎
- オーエスキー病
- 伝染性胃腸炎
- 豚エンテロウイルス性脳脊髄炎
- 豚繁殖・呼吸障害症候群
- 豚水疱疹
- 豚流行性下痢
- 萎縮性鼻炎
- 豚丹毒
- 豚赤痢
- 鳥インフルエンザ
- 鶏痘
- マレック病
- 伝染性気管支炎
- 伝染性喉頭気管炎
- 伝染性ファブリキウス嚢病
- 鶏白血病
- 鶏結核病
- 鶏マイコプラズマ病
- ロイコチトゾーン病
- あひる肝炎
- あひるウイルス性腸炎
- 兎ウイルス性出血病
- 兎粘液腫
- バロア病
- チョーク病
- アカリンダニ症
- ノゼマ病