消化器系の疾患/しぶり・便秘・便失禁
臨床症状-しぶり・便秘・便失禁
しぶり
しぶりは、排便でもそうですが、排尿でも痛みを伴って力むことを含みます。遠位結腸、膀胱、尿道の閉塞や炎症性病変が原因になります。
しぶり・排便困難の原因
犬 会陰の炎症・疼痛、肛門嚢炎
直腸の炎症・疼痛
肛門周囲瘻・腫瘍・直腸炎・寄生虫
結腸・直腸の閉塞
直腸腫瘍・直腸肉芽腫
会陰ヘルニア
前立腺肥大
骨盤骨折
直腸内異物猫 尿道閉塞
直腸閉塞
骨盤骨折
会陰ヘルニア
便秘
直腸付近の膿瘍大腸炎、会陰ヘルニア、肛門周囲瘻、前立腺疾患、膀胱・尿道疾患がしぶりの原因としてよくみられる疾患です。直腸の腫瘤と狭窄で血便は出ないが、しぶりだけを起こす場合もあります。
猫では、まず、消化管疾患なのか、下部尿路疾患なのか、を区別しましょう。排便困難なのか、排尿困難なのか、を判断することは、よく観察すればわかります。膀胱の触診でも判断可能でしょう。拡張していれば膀胱閉塞、膀胱が小さいが疼痛を感じているなら膀胱の炎症です。
消化管からのしぶりと判断できれば、腹部と直腸を触診して、会陰部と肛門を調べておきましょう。腹部の触診で、激しい疼痛を訴えて、結果的に便秘になっていることもあります。便秘としぶりを区別しておくことも重要です。指の直腸検査で、狭窄、会陰ヘルニア、腫瘍・腫瘤、前立腺肥大、骨盤骨折がわかりますけど、小型犬が多いからねぇ・・・。肛門嚢の内容物もみておきましょう。便の硬さ、異物の混入の有無も調べておきましょう。状況に応じて、生検も必要です。
炎症を起こしている犬では、排便の後でも、便を出そうとして力み続けることが多いですが、便秘の犬では排便前に力むだけです。完全にしゃがんだ状態でのしぶりは炎症疾患であることが多くて、歩行状態や半分しゃがんた状態でのしぶりは便秘によるものと判断できます。排便時の様子を観察してみましょう。
便秘
何となく対症療法で改善していきますが、基礎疾患は特定した方がいいです。
便秘の原因
医原性 薬剤による 行動・環境要因 居住環境・慣例の変化
排泄箱の汚れ・排泄箱がない
しつけ不備
活動性の低下排便拒絶 行動異常
直腸・会陰部の疼痛
排便姿勢が取れない
(整形外科的な問題・神経学的な問題)食物性 脱水状態での過剰な繊維質の食事
被毛・毛、骨、植物、プラスチックの飲み込み結腸の閉塞 偽宿便
会陰ヘルニア
腫瘍・肉芽腫・膿瘍・異物
前立腺肥大・嚢胞
腰下リンパ節の腫大
瘢痕・狭窄結腸の虚脱 抗カルシウム血症
低カリウム血症
甲状腺機能低下症
神経筋の疾患
脊髄の外傷
骨盤神経の損傷
自律神経障害
結腸筋の伸張その他 重度の脱水
巨大結腸症(猫)医原性、環境要因・行動要因(ストレス性)、食物性の原因は、問診で解決すると思います。便を調べて、詰らせるものが含まれていないか、をみておくことも必要です。その後は、直腸の検査を実施して、閉塞や浸潤性病変を調べましょう。腹部X線検査や腹部エコー検査で病変がみつかることもありますし、血液検査で、高カルシウム血症、低カリウム血症、甲状腺機能低下症がみるかることもあります。
特に、猫では、巨大結腸症に注意しましょう。こぶし大の石のような硬さの糞便が触診で確認できます。
便失禁
神経筋の疾患で起こります。肛門の刺激に対して反応が悪い場合は、肛門、会陰、後肢、尾骨部の神経異常があると考えられます。