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神経系の疾患/てんかん発作

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てんかん発作

犬や猫は、ときに非てんかん性の突発性障害に罹患して、行動上の変化、虚脱、異常運動、一過性の神経症状や麻痺を示します。この障害を、てんかん発作と区別することは重要です。失神の原因となる不整脈、低血糖、低コルチゾル血症、電解質異常、急性前庭障害、ナルコレプシー、カタプレキシー、重症筋無力症による虚脱などは、すべて突発性障害です。症状をよく観察して、異常が発現する前後の様子をみることは、てんかん発作との区別をするに有用です。特に、てんかん発作のみに付随する発作後期の存在は、有力な鑑別点になります。

発作の種類

犬や猫の発作の多くは、強直間代性の発作で、伸筋の過度な緊張(強直)が起こって、側臥位に倒れて、強直と弛緩が交互に起こる(間代性)ようになって、結果的には律動的な筋肉の痙縮が起こることで遊泳運動や肢の単収縮、咀嚼運動などがみられます。発作の間、意識はありませんが、眼は開いたままです。

焦点性(部分性)運動発作というのもあります。この発作は、片側大脳半球の一部から生じて、。病変側から体側へ頭位を回旋したり、病変と対側の顔面や四肢の強直間代性痙攣や痙縮などを含む非対称性の症状を示します。この発作では、最初に意識減弱や奇異行動を取ることがあって、攻撃性が亢進したり、遠吠え、徘徊、旋回、落ち着きがない、ふらつきなどみられます。強迫定型行動との区別がつきづらいこともあります。

焦点性運動発作は、全般強直間代性発作に移行することもあります。焦点性運動発作で始まる場合は、器質的な脳疾患に関連していることが多いのが特徴です。

発作の分類

発作性疾患は、原因によって特発性・頭蓋内性・頭蓋外性に分類されます。特発性てんかんは、発作の原因となる明らかな頭蓋内外の原因がなく、併発する神経疾患もなく、遺伝的背景が疑われるものです。犬の多くはこれが原因で、猫ではほとんどありません。

さらに犬の3割程度と猫のほとんどは、頭蓋内に器質的な病変があって、発作の原因となります。外傷、腫瘍、炎症や奇形などが考えられます。症候性てんかんと呼んでいます。ごく稀に、過去の何らかの障害による脳損傷の痕跡として、発作が二次的に生じているのではないか、と推察される発作(瘢痕組織性)があって、一応、症候性てんかんに分類しています。頭蓋外の原因として、毒物の摂取、内分泌・代謝性の疾患も原因となります。

てんかん発作を起こす主な疾患

特発性頭蓋内性頭蓋外性
原発性










先天性奇形
水頭症
滑脳症
腫瘍
感染性・炎症性疾患
肉芽腫性髄膜脳炎
壊死性脳炎
血管傷害性疾患
出血・梗塞
代謝性蓄積症
変性性疾患
中毒
代謝性疾患
低血糖
肝疾患
低カルシウム血症
高リポ蛋白血症
過粘稠度
電解質失調
高浸透圧
重度の尿毒症

てんかん発作は、前脳部、とくに大脳の前頭葉や側頭葉の機能的・構造的異常を示唆しています。発作の原因となる代謝性、中毒性疾患は、興奮性・抑制性神経伝達物質の均衡を機能的に変調するものと考えられます。頭蓋外要因による発作を起こす症例では、神経学的な異常を特定できないことが多いようです。症候性てんかんを引き起こす症例の多くは、前脳病変を示唆するさまざまな症状を示して、行動の変化、病変の側に向かって動く旋回行動、病変と対側の不全麻痺や姿勢反応の欠如、病変と対側の視覚消失や顔面痛覚鈍麻などが認められます。

特発性のてんかんでは、発作閾値が低下した状態にあります。これは、内因性神経伝達物質の不均衡やイオンチャンネルに影響する遺伝的変異などによって引き起こされます。発作の起こる脳内部位では、発作活性を導く自己活性型の固有細胞が含まれているようです。特発性てんかんの動物は、発作のない期間は至って正常で、検査を行っても異常はみつかりません。

 特発性てんかん

犬のてんかん発作の最も一般的な原因です。明確に特定できる原因のない反復性のてんかん発作が起こります。発作と発作の間の期間は、至って正常です。若い成犬で、非進行性の献血的な発作(1年以上の病歴)と4週間以上の発作間欠期があれば、特発性てんかんと診断されます。一般検査、神経学的検査、眼検査、その他の検査を含めて全て正常です。猫では、特発性てんかんはまれで、多くは腫瘍や脳炎など明らかな頭蓋内原因が認められます。

犬種によっては、遺伝性であることがわかっている系統もありますが、ほぼ全ての犬種で認められます。日本で好んで飼育されている犬種で、てんかん発作を示してよく来院するのは、ミニチュアダックスフンドやチワワでしょうか。発作の初発は、多くは6ヶ月~3歳齢です。傾向として、初発のてんかん発作の発症が、若いほど、以後の管理が難しくなるようです。

特発性てんかんの発作は、たいてい意識消失を伴う全般強直間代性痙攣で、1~2分程度時臆します。ラブラドールレトリバーやトイプードルなどで、軽度な全般性発作を示す犬種があって、意識が残存しつつ、しゃがみ込んだり不安げな様子を見せたり、不随意の震え、筋硬直、平衡感覚の異常などを示します。多くは発作後期に移行して、典型的な強直間代性発作が起こるので、それまでの症状が発作であったことに気づく、ということもあります。

発作は、数週間~数ヶ月の間隔で、定期的に繰り返して生じます。加齢によって、とくに大型犬種では、発作の頻度と重篤度が増してきます。犬種によっては、24時間以内に複数回の発作を頻発することがあります。これも大型犬種で多いのが特徴です。ボーダーコリー、ダルメシアン、ジャーマンシェパードでは、この24時間以内の群発的な発作の発生が初めての発作であることもあります。発作が発症した初週に、2回以上の発作が生じた場合は、進行性の頭蓋内・頭蓋外の原因が疑われます。

 頭蓋内性てんかん

症候性てんかんは、前脳に局在する頭蓋内疾患の直接的な影響で起こります。感染性の炎症性疾患は若齢で認められることが多くて、腫瘍なら6歳齢以上で一般的です。前脳病変を示唆する限局的・多巣性の神経学的異常が発作間欠的に認められますが、症候性てんかんの動物が必ずしも神経学的検査で異常を示す訳ではありません。診断には、詳細検査とともに脳脊髄液検査、CT検査やMRI検査が必要です。

 瘢痕組織性てんかん

瘢痕組織に関連した獲得性てんかんが、炎症性、外傷性、中毒性、代謝性、血管障害性疾患の後に生じます。明らかな外傷や感染が確認されたら、ほとんどの場合発作が始まる数年前に、先行して起こっています。検査では正常で、MRI検査でも器質的病変は確認されません。

治療は特発性てんかんと同様で、てんかん薬治療を行います。予後は、獲得性てんかんの方がいいようです。

 頭蓋外性てんかん

低血糖、肝性脳症、低カリウム血症、原発性高リポ蛋白血症が発作の原因になります。過粘稠度症候群(多発性骨髄腫、多血症)、重度な電解質失調(高ナトリウム血症)、高浸透圧(未治療の糖尿病)、熱中症、重度の尿毒症といったような代謝異常も発作を引き起こします。それと代表的なのは、門脈体循環シャントによる肝性脳症です。肝機能の評価は重要です。

診断評価

発作

発作を起こす症例に対しては、多くの場合、来院時には状態が落ち着いていることが多く、発作期に診察が可能なことは少ないので、飼い主からの詳しい聞き取りは重要です。問診によって、実際のその突発的な事象が本当にてんかん発作であるのか、発作であればどんな発作だったのか、全般性なのか、焦点性なのか、精神運動性なのか、を考えていきます。

発作と日常生活との関連性、発作の持続時間、観察される発作後の異常などを確認しましょう。飼い主には、発作の数週間~数ヶ月前の行動、歩様、視覚、睡眠様式の変化、器質的な前脳病変を示唆する所見がないか、をよく聞いておきましょう。発咳、嘔吐、下痢、多飲・多尿、体重減少・増加などの変化も記録しておくべきです。ワクチン接種歴、感染源、薬物・毒物の摂取、頭部外傷の有無も要確認です。

発作が既に長期間にわたって間欠的に起こっているなら、発作型と頻度を記録して、疾患の進行具合治療への反応を評価します。特発性てんかんを疑う場合は、親・兄弟のてんかん病歴を確認することも必要です。

てんかん発作を示す全ての動物で、一般検査と眼科学的検査、神経学的検査を行いましょう。発作直後、発作後期には、一過性の視覚障害や意識状態の変調、姿勢反応の消失といった対称性の神経学的異常が認められるのが一般的ですが、これを誇大解釈することは不要です。発作後期を終えても神経学的異常が残存する場合は、頭蓋内の原因が考えられます。

リンパ節や腹部の触診と同様に、乳腺や前立腺の検査は、脳へ転移する可能性のある原発性腫瘍を評価するために行います。中毒性、代謝性原因による発作は、身体検査で特異的な異常所見を示すことがあるので、診断に役立ちます。血液検査や尿検査で異常がみられないことは多いのですが、肝障害を示唆されたら、肝性脳症を疑って、肝機能の評価を行いましょう。

先天性器質的障害は、非常に若い動物における発作の最も多い原因ですので、水頭症や滑脳症などを疑いますし、特発性てんかでは6ヶ月~3歳齢の間にみられますし、高齢になってからの発作は、特発性と診断するのは不適切です。高齢動物の発作の原因は、脳腫瘍、血管障害、後天性代謝障害の可能性がより高くなります。特発性てんかんと判断できたら、発作の頻度と重篤度を監視しながら、抗てんかん薬治療を開始しましょう。

発作間欠期でも神経学的異常がある犬、初めての発作が5歳齢以上の犬、1ヶ月以内に頻繁に発作を起こしている犬には、頭蓋内評価を含めた詳細検査をすべきです。転移性腫瘍の腱索を行った上で、CT検査やMRI検査を行いましょう。

抗てんかん薬治療

てんかん発作の治療には、抗てんかん薬療法を行います。てんかん発作を示す全ての動物に抗てんかん薬が必要になるわけではないですが、病態の初期に治療を開始した方が、治療開始前に多くの発作を起こしている犬に比べて、長期的には発作の制御がより良く可能になるのは間違いありません。しかしながら、治療を始めると、ずっと治療が継続するために、時間的な献身と経済的な理由もあり、飼い主の多大な協力が必要になってきます。

頭蓋内原因による発作、1回以上群発発作があった症例、発作重積の経験がある症例、発作頻度が12~16週周期より短くなってきた症例、発作頻度が目だって増えてきた症例については、治療を開始すべきです。

抗てんかん薬治療の開始指標
1. 発作の原因が解決不能な頭蓋内疾患
2. 群発発作
3. 少なくとも1回の発作重積を経験している
4. 発作間欠期が12~16週以内
5. 発作頻度、重篤度が増加している

投薬によって、特発性てんかんの完全な発作抑制は、稀にしか達成されませんが、発作の頻度と重篤度を軽減するということでは、7~8割程度が達成可能です。治療の監視は、飼い主による発作頻度と重篤度の記録が頼りにもなります。治療による有害作用や用量を調整することも必要です。発作重積の緊急事態についても、飼い主さんには説明しておきましょう。

治療中は、血液検査、尿検査を行って、モニタリングを行います。肝機能評価は重要です。治療の開始時は、単剤(1種類の抗てんかん薬)で開始します。有害作用の発現も抑制できますし、経済的にも負担が抑えられます。初めに投与した抗てんかん薬が、最適な血中濃度を維持しているにも関わらず効果がない場合は、他の薬に変更するか、追加していきます。

治療指針
1. フェノバルビタール(2m/kg、PO、BID)で治療開始
2. 治療開始から48時間後も発作が続くなら、用量を2倍に。
  発作が制御されたら、投与量を維持。
  年に2回は、血中濃度と肝機能をモニタリング
3. 発作が制御できない場合は、臭化カリウムを追加投与
   (食事とともに、15mg/kg、PO、BID)
4. それでも制御できないなら、臭化カリウムを20mg/kgに増量

 フェノバルビタール

フェノバルビタールは、比較的安全で、効果的で、安いお薬です。吸収も早く、経口投与後4~8時間で、血中濃度が最大になります。適当な開始用量は2mg/kgで、1日1回投与を行います。

投与開始2週間後に、朝の投薬前の血中濃度を測定して、薬効を発現できる用量を満たしているかどうかを確認します。あまりに低い場合は、フェノバルビタールを25%増量して投与します。さらに2週間後に、血中濃度を測定して、それでも低ければ、2週間毎に25%ずつ増量します。最適な血中濃度を得ることができたら、2~3回の発作周期を観察して、うまくコントロールできていれば、その投与量を維持します。

フェノバルビタールの長期投与は、薬剤誘導性の肝ミクロソーム酵素活性に影響を与えて、フェノバルビタール自身の排泄を亢進してしまいます。そのため、用量を増加させる必要が出てきます。血中濃度は、6ヶ月毎に測定しておく方が無難です。

副作用として、投与開始7~10日程度、鎮静、抑うつ、運動失調などが認められますが、耐性が獲得されて、10~21日程度で消失します。持続的な副作用として、多飲・多尿と多食がみられます。飼い主には、多少、食欲が強くなっても、過剰に食事を与えないように伝えておく方がいいでしょう。また、フェノバルビタールに対する依存性が生じるので、薬剤を突然中断すると、発作が誘発される可能性があります。なので、一旦、治療を始めたら、継続して薬を服用する必要があります。

その他、注意しておくべき有害作用には、免疫介在性の好中球減少や血小板減少、表在性壊死性皮膚炎、さらには、最も重要なのは、肝毒性です。フェノバルビタールが肝酵素を強力に誘導するので、ALT、ALPの上昇が、ほとんどの犬で認められます。顕著な肝毒性はまれですが、フェノバルビタールのCmaxが高くなりすぎると、食欲不振、鎮静、腹水や黄疸のみられることがあります。肝毒性がみられたら、すぐに別の抗てんかん薬に変更して、肝障害に対する治療を行いましょう。

フェノバルビタールの肝酵素誘導作用は、他の薬剤の肝臓での代謝を促進して、併用している薬剤があれば、それらの前進作用を減弱させてしまいます。また、ミクロソーム酵素を阻害する薬剤(クロラムフェニコール、テトラサイクリン、シメジチン、ケトコナゾールなど)は、フェノバルビタールの肝代謝を強く抑制してしまうので、血中濃度が上昇しすぎて、副作用(中毒)を引き起こす可能性がありますので、十分に注意をしてください。

しかしながら、適切に血中濃度が維持されていれば、フェノバルビタール単剤による治療で、十分に効果が得られます。適切に血中濃度を維持しているにも関わらず、発作の頻度や重篤度が許容できないならば、多剤を追加することを考慮します。

 臭化カリウム

フェノバルビタール治療に追加する薬剤の第1選択薬は、臭化カリウムです。臭化カリウムは、単剤でも効果がありますので、肝障害を伴う犬や、フェノバルビタールを用いることができない症例では、単剤で第1選択薬とすることもあります。単剤で臭化カリウムを使うのは、発作頻度の低い特発性てんかんの大型犬で行うことがよくあります。猫は、進行性気管支炎の有害作用が強く出るので行いません。

臭化物は、未変化体で腎臓から排泄されます。肝臓で代謝されないので、肝毒性の原因になりません。臭化カリウムは、200~250mg/mLの濃度となるように調製して投与します。濃縮されると胃粘膜を刺激して嘔吐を起こすことがありますので、食事とともに与えるのが適切です。

投与量は、単独なら20mg/kgにて、1日2回、経口投与を、フェノバルビタールと併用ならば、15mg/kg、1日2回、経口投与で開始します。臭化カリウムは、投与開始時と血中濃度が定常状態に達するまでに時間差が生じてしまいます。そのため、即時的にコントロールが必要な発作を示す犬に対してはあまり用いません。フェノバルビタールが使えず、臭化カリウムで制御せざるを得ない場合は、初期投与量を多くして、30mg/kg・1日4回・5日間の投与で血中濃度を適切に保って、その後、維持量の臭化カリウムを投与します。

主な副作用は、多飲・多尿と多食ですが、フェノバルビタールほど強くはありません。一時的な鎮静と、協調障害、食欲不振、便秘がみられることもあります。胃粘膜の刺激による嘔吐は、1日量を細かく4回に分けて、食事とともに与えることで軽減できます。フェノバルビタールとの併用投与で、一時的な鎮静が起こるかもしれませんが、一過性です。

 ジアゼパム

依存性があることと、抗痙攣作用に対する耐性があるので、初期の抗痙攣薬として使用します。猫は耐性が生じないので、ジアゼパムの経口長期投与がある程度有効です。投与量は、0.3~0.8mgkgで経口投与します。副作用は鎮静だけですが、この鎮静作用を利用した処方をすることもあります。猫では、特異的に重大な肝毒性を起こす個体がときおりいますので、注意は必要です。

ジアゼパムは、発作の救急管理や群発発作を呈する特発性てんかんの犬の、頓服薬として使用します。発作前期が認識できたり、徴候を示す犬では、その症状がみられたら、直腸内投与(2mg/kg)をできるように準備しておくといいでしょう。

 その他の治療薬

クロラゼペート
ジアゼパムより、少し作用時間の長いベンゾジアゼピンで、抗痙攣薬として使います。長期投与は避けましょう。抗発作作用にも、他のベンゾジアゼピンに対しても耐性を生じて、効果がなくなります。効果的な使用方法は、フェノバルビタールの血中濃度が十分に上昇するまでの期間や用量調整が必要な期間に、補助的に用いることです。

フェルバメート
フェノバルビタールや臭化カリウムが効果を発揮しない難治性てんかん発作に対して、追加薬として用いることがあります。推奨開始用量は、15mg/kgで、1日2回、経口投与します。経口投与の70%が尿中に排泄されて、残りは肝ミクロソーム酵素(P450)で代謝されます。比較的安全な薬剤で、効果がなければ15mg/kgずつ用量を増やすことができて、最大で70mg/kgまでの投与が可能です。鎮静は生じません。肝毒性があるので、モニタリングが必要です。

ガバペンチン
GABAの構造的類似薬で、作用機序はよくわかっていません。開始用量は10~20mg/kgで、半減期が非常に短いので、1日3~4回の投与が必要になります。肝臓で若干の代謝を受けて、腎臓から排泄されます。薬物相互作用を受ける可能性が低くなります。副作用は、鎮静ですが、過剰な鎮静を避けるためには、必要に応じて徐々に投与量を増量していきます。最大で80mg/kgまで可能です。

ゾニサミド
スルホンアミド系抗てんかん薬で、てんかん焦点を抑制して、てんかん性放電の波及を遮断します。吸収はよく、肝臓で代謝を受けます。フェノバルビタールを始め、ミクロソーム酵素誘導を起こす薬剤が併用されていなければ、半減期は長く(15時間)なります。単剤でも追加薬でも有効な抗てんかん薬です。軽度の鎮静、運動失調、嘔吐、食欲不振が副作用です。開始用量は、単剤では5mg/kg・BID、フェノバルビタールと併用するなら10mg/kg・BIDです。

レベチラセタム
人で耐用性が高く効果的な新しい抗てんかん薬です。犬の半減期は、3~4時間で、吸収が良く代謝も素早く行われます。顕著な肝代謝がなく、多くは未変化のまま尿中に排泄されて、残りは加水分解によって代謝されます。犬や猫でも効果が得られるようです。投与量は、20mg/kg・TIDで投与するようで、軽い鎮静、流涎、嘔吐が副作用でみられることがあります。

代替療法

抗てんかん薬による効果が得られない症例があって、期待通りにコントロールできない症例では、根底にある頭蓋内疾患や代謝性疾患を再評価して、それらが見つかれは、特異的な治療を行います。

それでも管理不能な難治性のてんかん発作に対する治療の代替法としては、低アレルギー食、鍼灸、外科的な脳梁離断、迷走神経刺激などが考えられます。

救急治療

発作重積は、意識回復がない連続した発作や5分以上続く発作活性と定義されています。発作重積では、動脈圧、体温、心拍数、脳血流量、脳の酸素消費量が増加します。発作が持続する場合、代謝的の悪化、頭蓋内圧亢進、アシドーシス、高体温、不整脈が認められるようになって、これらは進行性の脳虚血と神経細胞壊死を引き起こします。永久的な神経学的な損傷が起こったり、死亡することもあります。

発作重積は、常に救急疾患です。群発発作の制御をしっかりしなかったり、抗てんかん薬治療を突然中止したりした場合の離脱発作が、特発性てんかんが重積に至る大きな要因となります。重篤な代謝性疾患や頭蓋内疾患に起因するものもあります。特に、低血糖、低カルシウム血症、電解質失調には注意が必要です。原因が明確になっていれば、特異的な治療を早急に行います。

治療では、発作を止めて状態を安定させて、更なる損傷から脳を保護して、長時間の発作からの影響を回復させることに努めます。先ずは、酸素補給や輸液療法、支持療法を行います。発作を止めるためにはジアゼパム、発作の再燃を防止するためにフェノバルビタール、それでも発作が続くなら、ペントバルビタールやプロポフォールの点滴を行って沈静化させます。発作活性が続くと脳浮腫が続発するので、マンニトールとフロセミドで軽減することも推奨されます。

発作重積の治療
1. 可能な限り、静脈内留置を設置
   気道確保と呼吸の監視
2. IVができないなら、ジアゼパムを直腸内投与(2mg/kg)
   効果がない場合と発作が再燃する場合は2分毎に繰り返す。
   必要に応じて、用量を4倍まで増量。
   再燃を繰り返すなら、
   ジアゼパムを生理食塩水か5%ブドウ糖に混濁して1mg/kg/時で持続投与
3. さらなる発作を防止するためフェノバルビタールを投与
    (5mg/kg、緩徐にivもしくはim、10分間隔で2回)
   経口投与が可能になるまで、フェノバルビタールの筋肉内投与を
   6時間毎に繰り返す(5mg/kg)
4. 発作が上記薬剤に反応しないなら、
   ペントバルビタールを効果が出るまで、3~15mg/kgにて緩徐にiv
     4~8時間毎に反復投与か生理食塩水に混濁して1~5mg/kg/時で持続投与
   プロポフォールを4mg/kgで、2分以上かけて緩徐にiv
     その後、0.1~0.25mg/kg/分で持続投与で維持。

   麻酔は6~12時間維持した後、持続点滴量を漸減させて、覚醒させる
5. 維持量の静脈内輸液を開始
6. 体温測定
   41℃以上なら、冷水浣腸にて冷却
7. 高体温や発作が15分以上に延長していた場合
   マンニトール(1g/kg)を15分以上かけてiv
   フロセミド(2mg/kg)をiv