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免疫介在性の疾患/診断アプローチ

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診断アプローチ

感染症が除外されたら、諸検査から、罹患している可能性がある臓器に絞り込んで考えていきます。臓器特異的な検査として、罹患している臓器の生検、関節や脳脊髄液の評価、尿蛋白の定量などを行います。

感染や腫瘍が除外されて、標的臓器が同定できたら、免疫機能の異常に関する特異的な検査を行います。例えば、多発性関節炎の犬にはリウマチ因子の検査を行ったり、再生性貧血の犬にはクームス試験を行うぞ、と考えていきましょう。

クームステスト
直接クームス試験(直接抗グロブリン試験)は、症例の赤血球の膜に結合した抗体や補体の存在を検出する検査です。免疫介在性溶血性貧血の診断や、輸血反応による溶血の診断に使います。EDTAを添加した採血管に採取して、室温保存の状態で検査機関に提出すれば、測定してくれます。

犬リウマチ因子
リウマチ因子は、自分自身のIgGに対して産生される抗体です。抗体が抗原に結合した後に露出する免疫グロブリンのFc領域の一部分に対する抗体です。関節リウマチの診断基準の一つとして利用される検査です。陽性率は、50%程度でしょう。冷蔵保存した血清で測定可能です。

抗核抗体
全身性エリテマトーデスを疑う犬や猫の評価をするために行う検査です。全身性エリテマトーデスは、二つ以上の臓器に免疫介在性の疾患が存在すれば疑います。抗核抗体は、核の抗原に対する複数の抗体です。免疫蛍光染色によって検出します。冷凍保存した血清を、検査機関に送付したら測定してくれると思います。

免疫蛍光染色
多くのⅡ型、Ⅲ型の免疫介在性の疾患では、固定した組織で免疫蛍光法を用いて抗体の存在を確認できます。一般的には、組織切片を一次抗体で染色して、その後、二次抗体を加えて、蛍光染色します。紫外線下で光ります。糸球体腎炎が疑われる犬の腎臓生検や、骨髄の巨核球系細胞に結合した抗体の検出、自己免疫性皮膚疾患が疑われる皮膚生検の評価などに使用します。

スライド凝集試験
赤血球に自己凝集があるかどうか、を検出するための検査です。自発的な凝集(自己凝集)は、赤血球の表面にある抗体の架橋によって生じた赤血球の三次元的な集合体です。赤血球の膜状のIgGかIgMが高濃度になると起こります。これも免疫介在性溶血性貧血の診断に用いるものです。