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消化器系の疾患/嚥下困難・口臭・流涎

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臨床症状-嚥下困難・口臭・流涎

嚥下困難を示す動物に対しては、まず異物や外傷を原因として考慮します。長らく日本では発生はないものの、狂犬病も嚥下困難を引き起こす疾患ですので頭の片隅には置いておきましょう。

嚥下困難

嚥下困難の原因

口腔の痛み口腔の腫瘤口腔の外傷神経筋疾患
骨折、歯折
外傷
歯周炎
上顎or下顎の骨髄炎
口内炎、歯肉炎
舌炎、唾液腺炎
咽頭炎、扁桃炎
眼球後方の膿瘍・炎症
膿瘍、肉芽腫
咀嚼筋炎
嚥下に伴う痛み
腫瘍
 (悪性、良性)
好酸球性肉芽腫
異物
 (口腔、咽喉頭)
リンパ節腫大
中耳の炎症性ポリープ
唾液腺腫瘤



骨折
軟部組織の裂傷
血腫








咀嚼筋炎
顎関節疾患
口、咽頭、輪状咽頭の
 機能障害
輪状咽頭アカラシア
ダニ麻痺症
狂犬病
破傷風
ボツリヌス菌
脳神経機能障害
中枢神経疾患

嚥下困難、口臭、流涎の症状がみられたら、口腔、咽頭、頭部の徹底的な検査を行います。鎮静を行わずに実施するのが理想的ですが、どうしても必要な場合は麻酔下で行います。解剖学的な異常、炎症性病変、疼痛・不快感があるかどうか、必ず調べましょう。
疼痛があれば

  1.  口を開いた状態で痛むのか ⇒ 眼球後方の炎症
  2.  口腔外の構造と関係しているのか ⇒ 咀嚼筋
  3.  口腔に起因するのか

を鑑別します。
骨折、裂傷、腫瘤、腫大したリンパ節、炎症、潰瘍、瘻管、歯のぐらつき、側頭筋の萎縮、麻酔下で口を開けられないことや眼の異常(眼球突出、炎症、斜視など)も調べましょう。口の痛みを訴えるのに異常が特定できないなら、眼球後方の病変、側頭下顎関節疾患、後咽頭麻痺を考慮します。

口腔だけの疾患のみならず、尿毒症による舌の壊死、副腎皮質機能亢進症に続発する慢性の感染などの全身性疾患も考えておきましょう。口腔内の炎症には、免疫介在性疾患、ウイルス感染症、異物・肉芽腫、歯根膿瘍、熱傷などが考えられます。

神経原性の嚥下困難では、物を咥えることができなかったり、食事中に食べ物を口から落としたり、咽頭に障害がみられたりします。咽頭に障害がみられる場合には、吐出の方が頻繁にみられます。
冒頭に書いたように、狂犬病も神経原性の嚥下困難なので、一応、鑑別診断には入れておきましょう。通常は、脳神経の異常によるものであり、神経学的検査を行います。検査の結果、神経筋疾患の疑いがないようであれば、再度、解剖学的な異常や潜在的な痛みの原因を考えていきましょう。

口臭

一般的には、嚥下困難に付随して異常な口臭が確認されることが多いので、嚥下困難の原因を特定するほうが効果的です。
嚥下困難がないのに口臭が認められる場合、糞便や異臭を発する物質を摂取していないか、を確認しましょう。食道に原因があることも考えられます。腫瘍があったり、食道の狭窄もしくは巨大食道症などが原因として挙げられます。

上記、原因が見当たらないなら、歯石の蓄積により歯周ポケットや歯根部への細菌の感染・増殖が大きな原因だと考えられます。歯石除去を試みて症状の緩和の有無をみてみましょう。歯石除去ができないなら、口臭予防スプレーを試してみるといいでしょう。
ちなみに、犬や猫には虫歯はないです。

口臭の原因

細菌性有害物質の摂食
口に残った食物
  露出した歯根、腫瘍、大きな潰瘍
  咽頭性嚥下困難
食道に残った食物
歯石、歯周炎
損傷した口腔組織
  口や食道の腫瘍・肉芽腫
  重篤な口内炎・舌炎
壊死した食物、臭気を持つ食物
糞便






流涎

流涎は、吐き気、口の痛み、嚥下困難によって生じます。よだれを流す原因を見極めて治療にあたっていきましょう。

流涎の原因

流涎症偽流涎症
吐き気
肝性脳症
発作
化学物質や毒物による刺激
高体温
唾液腺の分泌過剰
習性
口の痛み
 口内炎・舌炎・歯肉炎
 咽頭炎・扁桃炎・唾液腺炎
口腔性または咽頭性嚥下困難
顔面神経麻痺