消化器系の疾患/腸の疾患/大腸疾患
大腸疾患
急性結腸炎・直腸炎
細菌感染、食事による影響、寄生虫による急性の結腸炎や直腸炎が起こることが、よくあります。
急性結腸炎は、大腸性の下痢が主症状で、血便、粘膜便、しぶりを起こします。でも、多くの場合、元気です。嘔吐は、普通、ありません。
急性直腸炎は、便秘、しぶり、排便困難、血便があり、直腸炎の場合、元気がないことが多いです。
症状は自然に治癒することが多くて、具体的な原因を突き止めることができません。治療には、食事性、寄生虫性の原因を取り除いて、対症療法で十分なことがほとんどです。
1日絶食をさせると、臨床症状が緩和します。その後、消化のいい食事を少量ずつ開始して、徐々に元の食事に戻していきましょう。多くは、2~3日で回復します。
肛門が擦れたり、汚れたりした部分は、水で洗浄し、清潔にしてあげましょう。
機能性腸症(過敏性腸症候群)
犬の特発性、慢性の大腸性下痢で、寄生虫、食事性、細菌性、炎症などの原因が全て除外された結果として診断される疾患です。
慢性的な大腸性の下痢が主症状で、粘液便がみられることもあります。血便や体重減少はほとんどないです。明確な発症原因がみつけにくい疾患ですが、ストレス性の下痢であることが比較的多いでしょうか。
高繊維食が比較的有効です。予後は良好です。投薬をするなら、抗コリン薬(ブチルスコポラミン)で大腸の蠕動運動を抑えてやるとよくなることもあります。
大腸の重積・脱出
盲腸結腸重積
稀ではありますが、犬で、盲腸が結腸に陥入する重積が起こることがあります。特発性のものですが、鞭虫による盲腸炎との関連があるかも知れません。
重積した盲腸が、重積部で出血して、血便や貧血がみられることもあります。下痢は少なく、腸閉塞に進行することはありません。
エコー検査や造影剤によるX線画像診断によって見つけることができます。治療には、盲腸を切除する手術を行えば、治癒します。
直腸脱
小腸炎や大腸炎を発症した幼犬や幼猫に多い疾患です。二次的な変化として、直腸の粘膜の一部、もしくは重度の場合は直腸全体が肛門から出てきてしまいます。
腸炎でいきんで直腸が逸脱してしまうのですが、直腸粘膜が露出すると炎症が増悪して、いきみが続いて、直腸脱が悪化します。
腹部の緊張を起こす原因、基礎疾患を取り除いてやりましょう。
出ている直腸については、直腸粘膜を整復して、中に戻してあげましょう。それでも、すぐに再発して脱出してくるようなら、1~3日間程度、排便できるだけの隙間を開けて、肛門を巾着縫合してみます。
直腸脱が重篤で戻らない状態になったり、粘膜が不可逆的な損傷を受けていたりしてたら、切除が必要なこともあります。
大腸の腫瘍
腺癌
人の腺癌とは違って、ポリープから発生する犬の結腸腺癌は多くありません。ポリープでは閉塞することは稀ですが、腺癌では内腔の狭窄を起こします。
高齢犬で発生頻度が増えます。血便がみられて、腫瘍の浸潤によって閉塞が起こり、しぶりや便秘を引き起こします。
直腸検査で、腫瘤を認めたら、生検を行って病理検査をやりましょう。粘膜下の深層まで組織をしっかり取って検査をしましょう。
完全に除去すれば治癒が期待できますが、腫瘍が骨盤腔内にあったり、浸潤や局所リンパ節への転移していると、完全に切除できず、予後が悪くなります。放射線治療で症状が緩和できる場合もあります。
直腸ポリープ
犬で、血便としぶりを示します。閉塞することは稀です。
ポリープは、直腸検査で検出できます。
完全に切除すれば、治癒します。術前に、結腸内の内視鏡検査、画像診断を行って、取り残しのないようにしましょう。完全に除去されないと再発して、再手術になります。多発性のポリープの場合は、粘膜切除が必要になります。
必ず病理検査を行って、ポリープの診断をしましょう。ポリープと悪性腫瘍との鑑別も必要です。但し、ほとんどの犬の直腸ポリープは癌化しません。