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消化器系の疾患/腸の疾患/肛門の疾患

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肛門の疾患

会陰・肛門周囲の疾患

 会陰ヘルニア

骨盤隔膜(尾骨筋と肛門挙筋)が脆弱になって、直腸が外側に逸脱することによって起こる疾患です。高齢の雄犬によく見られます。排便困難、便秘、会陰部の腫脹が認められます。

膀胱が反転してヘルニアに含まれていないかどうか、を調べましょう。膀胱がヘルニアを起こすと嘔吐を伴う腎後性尿毒症を起こして、致死的な疾患となります。指による直腸検診と、X線検査、エコー検査、尿カテーテルの挿入、もしくは腫脹部の穿刺を行います。尿の有無を確認しましょう。

腎後性尿毒症では救急処置が必要です。膀胱から尿を抜いて整復して、静脈内輸液を行いましょう。筋肉支持再建手術を行う方がいいですが、再手術の必要なこともありますので、インフォームドコンセントをしっかりと取りましょう。

 肛門周囲瘻

肛門陰窩や肛門腺が感染して、深部組織に向かって破裂して起こると考えられます。肛門付近に痛みを伴う瘻管があります。疼痛のために便秘が起こり、悪臭、直腸痛、直腸からの滲出液がみられます。直腸には肉芽腫や膿瘍が触知できます。
痛がるので、触診時には注意しましょう。

多くは免疫抑制剤(シクロスポリン3~5mg/kg、BIDなど)に反応します。なので、原因不明ですが、免疫介在性疾患である可能性があります。抗生剤を併用しておいた方がいいでしょう。

内科治療で反応しないなら、外科手術を行います。術後は、肛門付近を清潔に保って、便軟化剤や流動パラフィンを用いて、便通をよくしてあげましょう。

 肛門嚢炎

肛門嚢が感染して、膿瘍や蜂窩織炎を起こしている状態です。
肛門腺が溜まって、肛門嚢に刺激が出てきます。軽症なら、患部を舐めたり、床に擦りつけたりします。小型犬で発生率が高い疾患です。猫でもたまにあります。

症状が進行すると、肛門嚢から出血して、便に付着することもあり、痒みを通り越して疼痛が認められ、腫脹、瘻管形成、膿瘍がみられることもあります。肛門の下方4時7時の方向の皮膚が破裂している場合もあります。

肛門嚢の膿瘍物、血様物を絞りきりましょう。痛がりますが、頑張るしかないです。軽症なら、肛門腺を絞って、抗菌薬とステロイド剤を注入してやると治ります。1回で十分です。普段から飼い主が自宅で肛門腺絞りをできればやってあげること、できなければ定期的(1ヶ月に1回程度)に病院で肛門腺を絞っておきましょう。

膿瘍に対しては、切開、排膿、洗浄して、抗生物質を服用させます。それで治ります。症状がひどくて治療に反応しない場合、肛門嚢を切除すれば治ります。


肛門周囲の腫瘍

 肛門嚢腺癌

肛門嚢腺癌は、アポクリン腺由来の癌であり、高齢の雌犬にみられることが多い疾患です。肛門嚢や直腸付近に腫瘤の触知できることが多いのですが、はっきりしないこともあります。腫瘍に伴って、高カルシウム血症とそれに起因する食欲不振、体重減少、嘔吐、多飲多尿がよく認められます。高カルシウム血症と会陰部の腫瘤が便秘の原因にもなります。

腰下リンパ節への転移が認めれれることがあります。エコー検査で見つかることがあります。腫瘤があれば、細胞診を行いましょう。また、高カルシウム血症を示す高齢の雌犬がいれば、肛門嚢や直腸付近をよく観察しましょう。

治療は手術をするべきですが、腰下リンパ節に転移しているなら、化学療法も必要になるかも知れません。高カルシウム血症は、治療します。

 肛門周囲腺腫

皮脂腺に属する腺から発生する腫瘍です。肛門周囲腺腫には、テストステロン受容体が発現しているそうです。癌になることは稀です。腺癌は、腺腫よりも大きくなり、浸潤性で、潰瘍を形成して、転移の可能性が高い疾患です。

肛門周囲腺腫は、境界が明瞭で、隆起していて、発赤していることが多くて、痒みを伴うこともあります。雄の性ホルモンが成長を刺激するようで、高齢の雄犬に多い疾患です。瘙痒感があるので、腫瘍を舐めて、潰瘍ができることもあります。

悪性の場合には、局所リンパ節や肺に転移します。多発性で、悪性腫瘍の治療には、放射線治療が推奨されます。良性、転移をしていない単発性腫瘍なら切除しましょう。
腺癌では、化学療法が有効です。腫瘍のページを参照してください。