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泌尿器系の疾患

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泌尿器系の疾患

 症状

排泄に関する異常は、飼い主が気付きやすい疾患です。おしっこが多いのか、少ないのか、出ないのか、色がどうなのか、ということが主訴で聞けます。まずは、頻尿排尿困難血尿尿失禁尿道閉塞多飲多尿についてみていきます。
触診、血液検査、尿検査、画像診断などで同定される症状として、蛋白尿高窒素血症(BUNやクレアチニンの高値)腎腫大があります。
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 検査

尿素窒素(BUN)濃度とクレアチニン濃度は、糸球体濾過率(GFR)の指標になります。糸球体濾過率で、腎臓の排泄機能に関する正確な情報が得られることもあるので、必要に応じて使っていきましょう。

今では、X線やエコーによる画像診断が便利です。エコーでは腎臓内部の情報も得ることができます。腎生検などもエコーのガイド下で行いますが、腎生検は慎重に行う方がいいと思います。検査結果が予後に影響を及ぼすようならやってもいいですが、より侵襲性の低い検査行った後、血液凝固系の評価をしてから考慮すべきです。但し、腎臓が一つしかない、凝固系障害、水腎症、嚢胞、膿瘍が存在する場合は、禁忌です。

 糸球体腎症(ネフローゼ症候群)

糸球体や尿細管の炎症が糸球体腎炎で、免疫複合体が糸球体毛細血管壁内に沈着することで起こる免疫疾患です。犬の慢性腎臓病の主因です。症例は少ないのですが、糸球体内へのアミロイド沈着や糸球体基底膜の構造的な異常も重要です。
アルブミンの尿中への喪失は糸球体腎炎の特徴で、診断にも有用です。尿蛋白の程度は、慢性腎臓病の進行度合いとも関連しますので、糸球体疾患の症例では治療においても重要な指標になります。
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 急性/慢性腎不全

腎不全は、腎臓のネフロンの3/4程度が障害を受けて、腎機能がなくなった場合に起こります。腎機能が低下して、高窒素血症(BUNやクレアチニンの高値)や尿濃縮不全など、さまざまな異常が持続して起こる状態を、腎不全と定義しています。程度を表現したものですね。

急性腎不全は、腎機能が急激に低下して起こりますが、きっかけは、腎臓の虚血や毒性物質による傷害です。代謝活性の高い、近位尿細管やヘンレ係蹄上行脚の太い部分に障害を与えて、水や溶質平衡の調節を阻害します。
毒性物質は、尿細管細胞の機能を阻害して、細胞の損傷、腫大、壊死を引き起こします。虚血は、細胞の低酸素症や基質不足を引き起こして、アデノシン三リン酸(ATP)の枯渇や細胞の腫大、壊死を招きます。これらの尿細管の損傷に血管収縮が伴うと、さらに糸球体濾過率が下がります。

急性腎不全によって起こる尿細管の病変は、可逆的なものもあります。しかしながら、慢性腎臓病や急性期から慢性に移行した疾患のネフロンの傷害は、不可逆的です。不可逆的な傷害を受けたネフロンは、線維性結合組織で置き換えられるので、末期の腎不全から特定の原因を検出できることはありません。糸球体、尿細管、間質、腎血管系のどの部分が侵されても、ネフロンの特定部位で起きる不可逆性傷害で、ネフロン全体が機能不全に陥るからです。

慢性腎臓病の発生は、数週間単位から数年にわたるものまであります。末期に至ると、腎機能が改善することはありません。なので、慢性腎臓病に対しては、①原発疾患の特定と管理②疾患進行のモニタリングと抑制③臨床症状の緩和、を目標に治療を行います。
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 尿路感染症

尿路の細菌感染は、犬に多い疾患です。猫は、下部尿路の炎症性疾患は多いですが、細菌感染はあまりありません。犬の原発性尿路感染は、多くは尿道や膀胱に細菌性の炎症を伴って、尿管や腎臓へ上行することがあります。マイコプラズマ、クラミジア、ウイルス、真菌の感染は少ないというのが特徴です。

多くは抗菌薬療法に反応してくれます。免疫系の障害に関連した尿路感染では、抗生剤に反応しない場合が多くて、反応してても抗生剤の投与を中止すると感染が再発します。
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 尿石症

犬の尿には、カルシウム、シュウ酸、リン酸マグネシウム、アンモニウムなどが混ざっています。尿が過飽和状態になると、尿は沈殿する可能性があって、溶解している塩類から固形物を作る傾向があります。結晶尿は、尿が過飽和して起こります。結晶が膀胱内で凝集して、排泄されないと、尿石が形成されてしまいます。尿石は、尿路上皮を損傷して、尿路の炎症を引き起こします。血尿、頻尿、排尿困難の原因となります。炎症が起こると、細菌性尿路感染を併発させる素因ともなります。尿石が、尿管や尿道に詰まると、尿路が閉塞します。

犬の尿石の多くは、膀胱や尿道で検出されます。ストラバイト尿石(リン酸マグネシウム・アンモニウム)とシュウ酸カルシウム尿石が最も一般的で、尿酸塩、ケイ酸塩、シスチンなどに分類されます。
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 下部尿路疾患

猫の下部尿路疾患(FLUTD;Feline Lower Urinary Tract Disease)は、頻尿、血尿、排尿困難、不適切な排尿、尿道閉塞などが認められる疾患の総称です。猫では、症例の多い疾患です。一度発症すると、再発も多い疾患です。比較的若い時期にみられることが多く、2~6歳齢に多いのも特徴です。冬場に発症が多く、肥満猫の発症率も高くなるようです。

尿道閉塞を起こした雄猫は、高カリウム血症と尿毒症による死亡率が高くなります。FLUTDが何度も起こって、頻回のカテーテル挿入が行われる症例では、上行性の腎盂腎炎や、二次的な慢性腎臓病にも注意を払う必要があります。
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 排尿障害

排尿というのは、尿をためることと排泄することが神経の支配下で行われること。つまり、排尿の障害には、『尿貯留の異常(失禁)』と『膀胱排出の異常(尿貯留)』とがあります。
尿失禁は、尿の貯留段階での不適切な排泄、です。よくあるのは、排尿筋の収縮性の上昇や、尿道流出抵抗の低下で起こる失禁です。逆に、排尿筋の収縮性が低下したり、尿道からの流出抵抗が上昇すると尿貯留が起こります。膀胱と尿道の神経解剖学的見地からの考察と、薬剤の作用機序を理解することで、色んな排尿障害を効果的に治療していくことを目指します。
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