循環器系の疾患/心血管系の検査
心血管系の検査
一般身体検査
先ずは病歴・飼育環境などを問診することが必要です。問診で確認することは以下の内容。
- 年齢、品種、性別
- ワクチン接種歴
- フードの種類。最近、食物や食欲、飲水量に変化は?
- 動物の入手経路
- 飼育環境は室内か、室外か?
- 元気はあるか? 疲れやすいか? 最近、変化は?
- 咳をするか? いつ、どんな状況で咳をするか?
- 息を切らしたり、つらそうな呼吸はないか?
- 嘔吐・吐き気、下痢はないか?
- 尿の習慣に、最近、変化は?
- 失神したり、虚脱状態になることがないか?
- 舌や粘膜の色調はいつもピンク色か? 運動中では?
- 投薬歴は? 現在、服用中か? 過去に服用していたか? 薬の名称や服用量もわかれば。
上記内容を踏まえた上で、一般的な身体検査を行っていきましょう。
異常があれば、臨床検査に進みましょう。
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胸部X線検査
胸部X線検査は、胸腔内の様子を探るに、まず初めに行う検査です。
心臓の大きさや形態、肺の血管と実質を評価するために重要です。もちろん気管・気管支も造影されますが、その辺りは呼吸器系の疾患の項目にて。
循環器系の疾患において胸部X線検査で評価することは
- 心肥大
- 心房・心室の拡大
- 胸腔内血管(大動脈や肺動脈)
- 肺水腫
などでしょうか。
胸部X線の検査方法、読影・評価については、それだけで本が書けます。X線に限らず、外科手術など、技術の向上に実務経験が必要なことは、ここでは解説しませんので各自で別途勉強していきましょう。
心電図検査
心電図(ECG)とは、心筋の電気的な脱分極と再分極の過程を表したものです。心拍数、調律、心臓内の刺激伝導系の情報だけでなく、心房・心室の拡張、心筋疾患、虚血、心膜疾患、ある種の電解質異常と薬物毒性なども判定できることがあります。
しかしながら、うっ血性心不全の診断や心収縮力の強さなど、には不向きです。
心臓の刺激伝導系の概略図と正常な心電図波形をよく覚えておきましょう。
以下、順に説明していきます。⇒心電図検査
- 正常心電図波形
- 心電図の判読
- 洞性調律
- 異所性調律
- 伝導障害
- ST-Tの異常
- その他の異常心電図波形
- その他の心電図評価
心エコー検査
エコー(超音波)は非侵襲で動物の体内を造影できる有用な検査です。侵エコーでは、カラードップラーなどを使えば心機能を評価できることもできますし、心腔の多きさ、心臓壁の厚さ、心臓壁の動き、弁の形態と動き、大血管なども観察することができます。心嚢水や胸水も容易に観察できます。
心エコー検査も机上であれこれ言っても技術の向上は図れません。きっちり画像が取れてからの話です。しかし、それには専門的な技術が必要不可欠であり、腹腔エコー検査と含めて宮林先生の講習会を受講されることをお薦めします。
ここでは解説省略です。
その他
- 中心静脈圧測定
- 測定方法は、静脈カテーテルを頸静脈から右心房もしくは右心近くまで挿菅して測定します。体内の血流量のモニターとして用いますが、実際のところ、大学病院などの大きな施設でなければ測定することもないでしょう。
- 生化学マーカー
- 心トロポニン
- 心筋のカルシウムによる収縮を制御するタンパク質。クレアチンキナーゼよりも心臓の特異的で、心筋虚血のマーカーとして利用されます。
- トロポニンの増加は、心筋の炎症、外傷、うっ血性心不全、肥大型心筋症を示唆します。また、胃拡張・胃捻転でも増加します。
- まぁ、これも市井の動物病院では、ほぼ、測定されることはないですね。
- ナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNPなど)
- 心不全の存在や予後を示唆できるマーカーですが、全く一般的ではないので、臨床レベルで測定することはないでしょう。大学での今後の研究成果に期待しておきましょう。
- エンドセリン
- 心不全や肺高血圧症でエンドセリンが活性化しますけど、これも測定は一般的ではありません。エンドセリンは私の卒論テーマですから、言いたい事は沢山ありますが、やめときます(笑)
- 心トロポニン
- 心血管造営
- 猫の心筋症、猫のフィラリア、重度の肺動脈狭窄・大動脈弁狭窄・大動脈弁下狭窄、動脈管開存、ファロー四徴症などの診断に有効ですが、心エコーで十分わかりますので、これも今更やる必要もないでしょう。
- 心カテーテル
- 心臓内の圧(左心室内圧など)、心拍出量、血中酸素濃度が測定できます。
- カテーテルを頸静脈から挿入して、心臓の所定の場所へ設置します。ちなみに、私は学生時代、実験動物(ラット)の左心室内圧を測定してました。
- 街の病院での臨床レベルでは、これもほぼ行われないでしょう。
- PET(ポジトロンCT)、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像法)検査
- PETは放射性物質を用いて検査します。大掛かりな施設が必要で、日本国内でも検査できるところは限られます。
- CTやMRIは大きな病院なら設置しているところはあります。心臓やヘルニアなどの神経疾患には、よく用いられます。
- 非侵襲で行えることが利点ですが、動物の場合、全身麻酔をかけて行うので、細心の注意が必要です。
- 心嚢陰性造影
- エコーで十分でしょ。
- 心内膜心筋の生検
- 心筋の代謝異常を評価するために行いますが、研究レベルでの話です。一般臨床では行わないです。